伊藤沙莉主演のNHK特集ドラマ「ももさんと7人のパパゲーノ」(夜11:00-0:00、NHK総合)が8月20日(土)に放送される。同作は社会に“適応”した普通のOLのように振る舞いつつも希死念慮を抱えた主人公・もも(伊藤)が、自身と同じような気持ちでいながらも死ぬ以外の選択をしている人たちを訪ねて旅に出る物語だ。「死にたさを抱えてなお生きる人々」を題材にした同作の企画意図や込めた想い、制作の経緯について、企画者でもある演出の後藤怜亜ディレクター、脚本を担当した加藤拓也氏に話を聞いた。
2020年、新型コロナウィルスの感染拡大により、日本の自殺者数は10年ぶりに増加に転じた。そんな中で誰もが知る人気芸能人らの自殺も相次いだが、マスメディアによる自殺報道が影響してさらなる自殺を呼ぶ「ウェルテル効果」(※ゲーテ「若きウェルテルの悩み」の発売当初、内容に影響された自殺者が多く発生したことに由来)があった、と言っても過言ではない状況も発生してしまった。
社会問題としてワイドショーなどでも取り上げられ、世間に広く知られるようになった「ウェルテル効果」だが、実はカウンターとなる言葉がある。それが、「パパゲーノ効果」だ。
パパゲーノとはオペラ「魔笛」に登場する、信じた人と引き離され自殺しようとするものの、自分に似た片割れのような存在・パパゲーナとの出会いにより、生きることを選ぶキャラクターのこと。「パパゲーノ効果」とは、パパゲーノのように、“「自分と同じように希死念慮がありながらも死ぬ以外の選択をしている人のライフストーリーを知ること」で自殺を思い止まる効果”のことを指す。
「パパゲーノ効果の研究自体がまだ過渡期にあるのですが、事実として今、ネガティブな後押しになってしまう報道の数に対して、ポジティブなロールモデルになり得る番組が圧倒的に少ない、という指摘を専門家の方から頂きました。だからこそ、NHKではさまざまな手法を使い、どのような伝え方であればより伝わりやすいか、日本の文化やコンテクストの中では、どのようなものがよりポジティブな共感を呼ぶことができるのかを検証してきました」(後藤D)