描き方によっては諸刃の剣ともなりかねない繊細なテーマであるため、制作には細心の注意を払ったという。
「WHOのガイドラインを遵守し、専門家の方にも入っていただくことで、自殺を助長する表現を入れないようにしています。その一方で、希死念慮に対する否定的なメッセージを与えないことにこだわって制作しました。『自殺を助長しない』と同時に『死にたい気持ちを否定しない』物語をいかに成立させるのか、徹底的に取り組みました」(後藤D)
「表現ひとつでトリガーになってしまう可能性もあるので、後藤さんやプロデューサーに都度確認を取りながら進めました。企画意図から外れてしまわないようにという点は、常に考えていました」(加藤氏)
作中では、ももに対する周囲の反応が意図せず彼女を追い詰めてしまう場面も描かれている。我々が希死念慮を抱えた人と関わる際には、どのような点に気を付けるべきなのだろうか。
「傾聴の基本のような話になってしまうのですが、否定もアドバイスもせずに、ただ聞くことだと思います。その上で、話の中で、その人が思いもよらないようなところで肯定できる部分を見つける。そうしたことを専門家、当事者の方への取材から知りました。私自身も実践できずに落ち込むこともあるのですが、そうしてもらえると視界が開けることもあると思います」(後藤D)