少女時代・ユナ、“実力派女優”として見せる新たな顔…溢れ出す涙で圧巻の演技<ビッグマウス>

2022/08/10 06:30 配信

ドラマ コラム

夫の濡れ衣を晴らすために孤軍奮闘するコ・ミホ役のイム・ユナ(C)2022 Disney and related entities

韓国では、演技をするアイドルを“演技ドル”と呼ぶ。レジェンドガールズグループ・少女時代のセンター・ユナもその1人だ。だが、演技歴は15年になり、ここ数年は出演作を重ねるごとに評価を上げ、最近は“演技ドルの少女時代ユナ”よりも“実力派女優のイム・ユナ”と呼ぶ方がしっくりくるようになった。現在出演中のドラマ「ビッグマウス」でも、夫の濡れ衣をはらすために孤軍奮闘する芯の強い妻の演技で、さらに称賛が集まっている。(以下、ネタバレがあります)

時に無謀な賭けにも出る、行動力抜群の気丈な妻役に挑戦


本作は、キャリアを一発逆転させようと引き受けた事件に巻き込まれ、濡れ衣を着せられた勝率10%以下の三流弁護士が、生き残るため、そして家族を守るために、稀代の天才詐欺師“ビッグマウス”になりすまして、事件の裏に隠された上流社会の巨大な陰謀を暴いていくクライムミステリー。主人公・パク・チャンホを演じるイ・ジョンソクの除隊後初ドラマとしても注目の作品だ。

韓国のMBCで7月29日に放送がスタートし、同日よりディズニープラスの「スター」ブランドでも独占配信が開始された。

ユナの役どころは、チャンホの妻・ミホ。彼とは高校の同級生で、結婚して3年だ。看護師として働いていたが、ある日突然、夫が全く身に覚えのない容疑で逮捕され、稀代の詐欺師“ビッグマウス”に仕立てられてしまったことで、彼女の人生も一変する。

夫の濡れ衣を晴らすには、彼が扱っていた殺人事件のカギとなる、被害者の医師が書いた論文が必要だと考えたミホ。消えてしまったその論文について探るため、その医師が勤めていた病院に転職。論文についてきき回るが、かん口令を敷かれているのか誰もが「論文など無い」とシラを切る。これではラチがあかないと判断した彼女は、大勢の医師や看護師が集まるセミナーで危険を顧みず「殺された教授の論文は私が持っている」と嘘をついて賭けに出て、市長と渡り合う。

ミホはこのように無謀なところもあるが、行動力も度胸もある女性だ。そして気も強い。転職先の病院でいやがらせをうけても、動じないどころか証拠写真まで撮っておいて反撃する強さ。そして、警察で参考人聴取を受けたときにも、取調室で2時間待たされてもいっさい姿勢を崩さず、一筋縄ではいかない強さを見せた。そして、「夫はビッグマウスではない」と言う彼女は、根拠を問われると、「私の夫だから。世界で一番彼のことを知ってるから」と、意思の強さを感じさせるまっすぐな目で応えるのだった。

“ミホが1人のときに見せる弱さ”も繊細に表現


その一方、帰りのバス停で1人になったとき、チャンホとの関係が友達から恋人に変わった日に「俺と付き合ったら一生泣くことはない」と抱きしめられたことを思い出して涙する。泣きたくないのに感情があふれ返って止まらない涙と必死で闘う姿が、どれだけチャンホを恋しく思っているのか、また、周りにどれだけ虚勢を張って生きているのかが伝わってきて、見ているこちらの涙も誘う。

また、収監中のチャンホとやっと面会できたときも、「きっともう監獄から出られない」と弱気になり、離婚を切り出すチャンホに「あなたが私なら、えん罪で刑務所に入った私を見捨てるの?しないでしょ?離婚?濡れ衣を晴らして釈放されたら応じるわ」と、ずっと味方でいることを示した。

そして「俺は(ここで)死ぬかもしれない」と言う彼に「そしたら私も死ぬ。あの世で一緒に暮らそう」と答えてチャンホを号泣させた。子供のように泣きじゃくる夫を「イケメンが台無しだ」と、包みこむように抱きしめて静かに泣くミホ。彼女も夫と同じぐらい、それ以上に泣きたかったはず。だが、それをしたら夫がさらにつらくなる。彼女の夫への思いが感じられる嗚咽だった。

「ミホを動かす原動力は家族愛」だと言うユナ。「すべての喜怒哀楽の瞬間瞬間を共にしてきた時間。そして一番近くでチャンホを見てきた人間として積み上げた信頼。そういった感情が苦しい状況を耐える力となって、彼女を動かんです」とインタビューで語っていた。

実は、この作品の監督が一番悩んだキャスティングは、ミホ役だったという。「ミホはしっかりしてるが、誰かにとっては天使みたいだし、その上難しい状況を乗り越える突破力も持ち合わせた人物。すてきで善良なキャラクターだが、視聴者を説得しなければならない、難しい役」で、ユナが演じてくれたらいいな、と考えていたんだそう。すると、ジョンソクも同じことを思っていたという。それでオファーし、ユナから出演するという返事を貰ったときが「一番忘れられない瞬間」だと語っていた。