――大相撲のさまざまな道具が、最後の職人の技術で支えられていると知りいかがでしたか。
これまでは毎場所、淡々と過ごしてきましたが、今回の収録で大相撲の伝統というのも実は綱渡りでつながってきているのではないかなと思いました。
――これから実際に大相撲を解説される時の見方は変わりそうですか?
ガラッと変わりそうです。力士の勝負だけではなく、目に入ってくるものすべて、この道具は、この先も変わらず存在し続けられるのだろうかとか、そういったことを意識してしまうと思います。
――関取の皆さんにも知って欲しいと思いますか?
絶対に知るべきですし、私も含めて伝えなければならないと。伝えていくことで、改めて自分たちが伝統の世界にいて、その継承者だという思いを持つべきだと思います。単にアスリートというだけではなく、伝統の継承者だと意識してもらうためにも、こういった一つ一つの道具が、実は危機的な状況にあり、それをどうやって作っているか、職人さんたちの思いも知ってもらったほうがいいと感じました。
――力士の勝ちたいという気持ちに応えるために、台風でも倒れず土がついていない稲わらのみを使用しているという、「土俵のわら」職人・酒井さんの思いを聞いていかがでしたか?
そこまでの思いで土俵のわらを作られていることを知り、心打たれました。稲の一本一本に、酒井さんの思いがつまっているわけですから、土俵のわらも見方が変わると思います。さらに神聖なものなのだと感じます。
――番組の視聴者にどのような視点でみてほしいと思われましたか?
伝統ということばは、いろんなところで使われますけれども、大昔から大切にしてきたものや先人たちのこだわりが現代まで脈々と継承されているということだと思います。この番組を見ながら、相撲に携わっている人だけではなく、大昔の1000年も1500年も前の人がどういう気持ちで生活していたのか、そういうところまで思いをはせてほしいなと。そして過去と現代は伝統によって、すべてつながっているのだと感じてほしいなと思います。
――最後にメッセージをお願いします。
大相撲を陰で支えるいくつかの道具の継承が危機的な状況にあり、大相撲の伝統が綱渡りでつながってきていることが分かりました。番組を見ながら、先人たちがどのようなこだわりを持って伝統を守ってきたのか、そういうところに思いをはせて欲しいなと思いますし、過去と現代は伝統でつながっているのだということも感じて欲しいなと思います。
(「なぎ」は正しくは弓ヘン前の旧字の下に刀)