堂島孝平「いい意味で肩の力が抜けて、ミュージシャンとして、シンガー・ソングライターとして、一番いい状態かもしれない」

2022/08/25 12:00 配信

音楽 インタビュー

アルバム『FIT』が発売中の堂島孝平   撮影=大石隼土

“到達点”に自分が今いるんだなっていうのは喜びでもあります


SNSで注目を集めるパペットスンスンが手掛けたMVが現在公開中の「てんてん」。堂島が“今最もシンパシーを感じるミュージシャン”と話す女性シンガー・ソングライター・眉村ちあきがボーカルに参加した楽曲だ。一度聴いたら離れないポップなメロディーとユニークな歌詞のハマリ具合が絶妙だ。コラボの経緯から聞いた。

「眉村さんは僕がここ2年くらいで一番“ホンモノ”だと思っているアーティスト。何度かライブでご一緒した際に、ステージの使い方や魅せ方が自分と感覚的にすごく近いなと思って気になっていたんです。僕自身がステージの上で大事にしていること――使える場所は全部使う、無駄に動くとか、そういったユーモアも含めてエンタメとしてどう見せたら面白いのかといった自分の流儀みたいなものが、シェアできる感覚があるんですよね。今年頭には眉村さんのアルバムに僕がゲストボーカルで呼んでいただいて、作品として世に出ているコラボは既にあるのですが、それを踏まえて今回また一緒にやれたら、よりこの曲の強度が増すかなと思いました」

『FIT』に収録されるさまざまなカラーの楽曲が生まれていく中、「てんてん」はアルバムの最後に作られた曲だと明かす。

「憂いや哀愁、切なさ、色っぽさみたいなものを感じる曲も結構揃ってきて、最後にやっぱり、明るくてアッパーな曲も1曲入れたいなって。そんな感情が自分の中に生まれて作り始めました。ちなみにサビの頭の“愛は到達点に 到達点に達したのだった”というフレーズは、そこだけ最初からあって。一聴しただけだと何だか呪文みたいに聴こえるような感じをイメージしつつ、ほかにも“出発点”とか“頂点”とか、いろんな“点”を歌詞に並べた1曲になっています」

興味深いのは、言葉の響きの面白さを優先しつつもちゃんと意味のあるメッセージが込められているところ。

「僕がもっと若いときだったら、こういう歌詞を思い付いても“特に意味をなさない”ということに全振りしちゃっていた気もするんです。言葉の響きが楽しければそれでOKだったんですけど、今は、言葉も面白いけど1曲の歌詞全体を見たときにすごく大事なことを言っているような、その先の深みみたいなものも言えているほうが面白いなって。しかも、そうしたくてしているというよりは自然となってる感覚で、それは、今までいろんな歌を作り続けてきた甲斐があったなと思いますね。それこそ、そういう“到達点”に自分が今いるんだなっていうのは喜びでもありますし。眉村さんとのボーカルの妙に関しては、『2人の声の相性がいい』と言ってくれる方が多くて。人として、とか、パフォーマンスの相性がいいねっていうのは今までもあったんですが、2人の声の相性や音とのハマリ具合を褒めてもらえたのはうれしかったです。感覚的に聴き心地がいいというのは大事なポイントですから」