<メイドインアビス>残酷すぎる展開、全ては予言者ワズキャンの思惑…?イルミューイの変貌を考察

2022/08/25 17:00 配信

アニメ レビュー

第8話「願いの形」が放送された(C)つくしあきひと・竹書房/メイドインアビス「烈日の黄金郷」製作委員会

アニメ「メイドインアビス 烈日の黄金郷」(毎週水曜日深夜1:05~、TOKYO MXほか)の第8話「願いの形」が8月24日に放送された。「メイドインアビス」は「WEBコミックガンマ」(竹書房)で連載中の、つくしあきひと原作によるダークファンタジーアドベンチャー。人類最後の秘境と呼ばれる大穴アビスに、偉大な探窟家だった母を追う探窟家見習いの少女リコと、謎の少年型ロボット・レグ、アビスの中で出会った“成れ果て”のナナチが挑む物語だ。(以下、ネタバレが含まれます)

残酷すぎた“香ばしいもの”の正体


前回からヴエコが語り出した成れ果て村の成り立ち。それは黄金郷を求めたガンジャ隊の悲劇と絶望の回想だった。

ワズキャンから与えられた“香ばしいもの”のおかげで水もどきの症状から回復することができたヴエコ。高熱のまどろみの中、ただただ欲するままに口にしてしまったが、あれは一体なんだったのか。同じく発症していたベラフも“香ばしいもの”のおかげで回復していたが、彼はそれを食べてしまったことをひどく後悔し、精神を壊してしまっていた。

その答えはすぐにワズキャンによって明かされた。相変わらず飄々とした様子でいる彼の後に続きヴエコが見たものは、すでに人の形も言葉も失い、それでも一日と生きられない赤子を産み続け、愛おしそうに抱きしめるイルミューイの姿だった。産まれたばかりの人ではない赤子を取り上げたワズキャンは、「思うに鮮度なんじゃないのかな」とヴエコに話しかけながら、包丁を肉に当てる。これが気高いベラフがどうしても抗えず、そのために精神を壊してしまった原因だったのだ。


“度し難い“と表現されることが多い本作だが、今回は過去回を振り返っても指折りの闇深い描写であったのは間違いないだろう。ネット上のコメントを見るとこのシーンには胸を痛めた人も多くいたようだ。ただし、だからと言って本作を残酷なブラック作品と切ることはできず、痛みを伴うシーンでは、常にその中から掬われてくる人の精神性も描かれている。赤子を見殺しにした懺悔を言葉にしながら、イルミューイと共に命を落とそうとしたヴエコの姿。高潔ゆえに苦しむベラフの姿は、そこに心がないとは決して言えないシーンであったと思うところだ。


神がかりの予言者、ワズキャンが視ていたものは?

預言者ワズキャン(C)つくしあきひと・竹書房/メイドインアビス「烈日の黄金郷」製作委員会


日に日に肥大化していくイルミューイから、ある日ヴエコは割れたはずの欲望の揺籃を見つけだす。それはワズキャンがイルミューイに渡した2つ目の卵だった。欲望の揺籃は願いを叶える卵であるという。しかし、今のこの状態は本当にイルミューイが願ったことなのか。ワズキャンが返した穏やかな表情は、笑みというには恐ろし過ぎるものだった。

神がかりの予言者ワズキャンには一体どこまでが視えていたのか。キャンプから動き出したイルミューイの行動を「彼女の本当の願い」と言い、ベラフには「君が必要だ」と、まるでこの事態を予見していたかのような口ぶりで諭す。その言葉の意味を証明するように、イルミューイに自身を食わせたベラフは尊厳を取り戻したかのように、神々しい白龍のような姿に生まれ変わる。ベラフの生まれ変わりは地獄の日々からの解放に見えたのか、ワズキャンの促しに押され、生き残っていたガンジャ隊の面々も進んで身を捧げ、新しい姿を手に入れていく。

身を捧げたガンジャ隊は成れ果てとなった(C)つくしあきひと・竹書房/メイドインアビス「烈日の黄金郷」製作委員会


しかし、ヴエコだけは違った。彼女にはこれが、イルミューイが望んだことだとはとても思えなかったのだ。崖に立ったヴエコにワズキャンはそれまでの余裕を消し、君がいなくなったらイルミューイの願いは叶わなくなってしまうと諭すように投げ掛ける。自分が死んだらイルミューイはきっと悲しんで、弱って、死んでしまうだろうと、ヴエコも答えを返す。そして、「それで?私が死んだら予言が外れてしまうの?」と。

さっと、ワズキャンの顔色が変わる。「こめんね、イルミューイ。我がままで…。私だけの暖かい闇…誰にも渡さない…」。断崖に身を投げたヴエコの懺悔の言葉は痛いほどに暖かく、愛を感じさせるものだった。