イルミューイの変貌には様々なことが推測できる。赤子を産むようになったのは、1つ目の揺籃で叶えた願いだったのだろう。しかし、赤子が水もどきの回復からの薬となり、肥大化していったのは、ヴエコが疑ったように本当にイルミューイ自身の望みだったのか。ガンジャ隊が生き残るために――イルミューイにとってはヴエコとずっと一緒にいるために、2つ目の揺籃を使ってワズキャンが刷り込んだ願いだったのではないか。明確なことは原作にも書かれていないため真実を知ることはできないが、ワズキャンの思惑が大きく働いていることは間違いないだろう。ワズキャンはヴエコが持っていた星の羅針盤を見たときに、なぜか望郷を感じたと言い、もしかすると、彼女をガンジャ隊に引き入れた時点からこの結末が視えていたのかもしれない。
身を投げたヴエコを寸でのところで救い、彼の予言は成就されたのか。イルミューイは成れ果て村の礎となり、アビスの呪い、原生生物の襲撃から体内の元人間たちを守っている。冒険を諦め、人間であることを捨てたガンジャ隊は、皮肉にもワズキャンが宣言したようにここで黄金郷の最初の住人になり、今も暮らし続けている。そして、長い間イルミューイの体の奥深くに捕らわれていたヴエコは、冒険という憧れに挑み続けるリコのおかげで解放されることになる。
そんなヴエコの衝撃の告白を受け止めたリコは、2つ目の揺籃から産まれたというファプタについて尋ねる。ヴエコが答えるファプタの目的は、母親の解放、この村を滅ぼすことだった。ワズキャンも視えなかったというファプタの誕生は、イルミューイが誰にも悟られぬよう、ひた隠しに育てていたただ1つの願い、最後の子供。ヴエコは産まれたファプタの叫びから、イルミューイが何も許してはいなかったことを悟っていたのだ。
「メイドインアビス」の物語にはいくつもの余白があり、いまだ明かされていない謎も多くある。例えば、2000年周期の地層から発掘されるお祈りガイコツと、ボンドルドが口にしていた「次の2000年」という言葉。また、アビスで産まれた者はアビスの中心に向かおうとする行動。呪い除けの籠で生き返った赤子のリコはアビスの中心に這っていったというように、イルミューイが大穴の中心にまで移動したのも、ファプタをそこで産むためだったのかもしれない。
なお今回のエピソードで言えば、イルミューイがなぜ膜を超えて村に入れないのか、ワズキャンが使った3つ目の欲望の揺籃はどうなったのかなどについて、原作者つくしあきひとが自身のTwitterで答えやヒントを送っている。気になる方は一度目を通してみるのもいいだろう。
次回、第9話は「帰還」。ナナチを取り戻したいというレグの頼みに、ファプタは耳と腕を引きちぎり、差し出していた。村に帰還するのはレグなのか、それとも…?放送後のTwitterには、「話は重いしつくし卿の性癖盛々でイルミューイもあんな目に……だからこそ面白いし引き込まれるのが凄い」「安直な死じゃなくて生を描いてるからいいんだよな」「どちらの意味にも取れる帰還。姫はヴエコをみたときにどうなるのか?」など、次週に向けて様々な感想が寄せられている。
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