矢井田 瞳が12枚目のフルアルバム『オールライト』をリリース。世界がコロナ禍に入ってからの2年間に書き溜めた曲たちが、ぎゅっと一枚に集められた。楽曲への想い、制作時の気持ちなど話しを聞いた。
「その間に思ったこと、感じたことがたくさん詰まっています。私の場合コロナ禍が始まってしばらくの間は、歌詞を書くのが大変でした。メロディーやコードが浮かんでくる楽しさ、ギターを弾きながら曲を書く楽しさは変わらないんですけど、さぁこれに言葉を乗せようとなったとき、どんな言葉を世界へ投げかけたらいいのか分からなくって…。けどその迷いを何周も経て“自分の目に映った身近な景色を掘り下げることが、もしかしたら誰かの日常に寄り添えることになるのかな”と思い至った感じですね。マーチング調のリズムだったり明るい曲調が多いのも、毎日を楽しみましょうという自分のモードがそうだったからだと思います」
2020年はデビュー20周年ということで表に出る計画も多々控えていたが、当然、予定は変更を余儀なくされた。しかし彼女はそんな中いち早く、新型コロナウイルスと戦う人々への歌「あなたのSTORY」を発表。これは新聞社との共同企画で、一般から広く募集した応援メッセージを歌詞にして一曲に編み上げたものだ。
「混乱する世界を前にして最初は戸惑うばかりでした。東日本大震災のときのようにミュージシャンとして何かお手伝いがしたくても、“みんなの元へ会いに行けない”という閉塞感が一コ乗っかっちゃってる苦しさがあった。でも身近なスタッフさんたちと話し合う中、“きっと何かできることがある。やれることからやるしかないよね”という気持ちになり、以来、今に至るまで前向きに活動を続けてこれました。『あなたのSTORY』もそんな中で取り組んだ曲です。あのとき、気持ちを切り替えることができたのは本当に周りのおかげでした。一人じゃ何もできなかったんじゃないかな」
年齢を重ね、花を愛でる気持ちがしみじみ解ってきたことから生まれた「花のような君に」、中学1年生の長女とのある日の風景が綴られた「駒沢公園」、初めにリズムとエレキギターのフレーズが浮かび一気に書き上げたというロックナンバー「オンナジコトノクリカエシ」――全体を通して、幼子のそれのようにみずみずしくポジティブな波動を感じさせるアルバムだ。『オールライト』という題名に込められた意味は、2曲目に収録のタイトルチューンの歌詞にそのヒントが見受けられる。
「オールライト=大丈夫という言葉って、人にも言うし自分に言い聞かせることもあるし、大丈夫じゃないからこそ言うときもあれば、嘘で大丈夫だと言うときもある。(楽曲『オールライト』の)「鏡の中/作り笑顔もなかなかイケてる」みたいに。この2年間に書いたバラエティー豊かな曲たちを包括するという意味でも、いろんな面を持っていて人によって見え方の違う、奥行きある言葉がいいなと考えると、これがしっくりきました。さらに言うとアルファベットよりカタカナ表記の『オールライト』の方が、冷たく見えたり温かくも見えたりして面白いかなと。アルファベットにすると字面的に丸みも入って、すごくいい方の“大丈夫”にしか見えないなと思って」
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)