今回、曲を書く際には「日常のどの時間帯に聴いてほしい曲か」というのが特に意識下にあったのだとか。
「朝出発する時に聴いてほしいな、とか、寝る前に聴いてもらえたらな、とか。そういったイメージが、自分なりの楽曲テーマを見付けるきっかけになりました。人から言われて気が付きましたけど、このアルバムの曲順は、朝から夜までの1日の流れにちょっと近いかもしれません」
ヨーデルにも似て伸びやかな、個性的かつ耳に心地いい歌声。衰えを知らないその声はどんなケアによって保たれているのかを尋ねると、ちょっと驚異的な(?)答えが返ってきた。
「何かカッコいいこと言いたいんですけど、気を付けていることってほとんどなくて(笑)。でも考え方を変えたことで喉が変わったという経験ならあります。デビューして4~5年くらいはすごくよく喉を潰していて、いつも耳鼻咽喉科へ行っては『明日ライブだからステロイド打ってください!』みたいな無茶な感じで…本番以外は目も喉も腫れてるなんてことがよくあったんです。でもそんな中、ピアニストの塩谷哲さんに『ピアニストって手を大事にするんでしょうけど、具体的にはどうしてるんですか』って聞いたら、もちろんストレッチとかいろいろあるけど『基本は脱力! ぐにゃぐにゃ!』って教えてくれて(笑)。その“ぐにゃぐにゃ”という言葉がすごくピンと来て、私も『喉は使うものではない。ただの出口だ』って思うようにしたんですよ。そしたら喉が壊れにくくなりました」
好奇心いっぱいの瞳、友達のように親しげな態度で、インタビューに応じてくれる矢井田。見るからに自然体の彼女が信じる歌唱の秘訣は、特別な治療や訓練よりも心の持ちようにある。
「そう、多分大事なのはマインドです(笑)。少なくとも私には“あまり考えすぎない”そのスタイルが合っていたみたいで、喉は単なる声の出口だって思うようにして以来ものすごく楽になったし、喉のトラブルが格段に減りました。格闘技でも、ぐっと力むんじゃなくて脱力してるときの方がいいパンチが出るというじゃないですか。そういうのにも通じる話かもしれない。まぁ、とはいえ加齢と共に若い頃特有のキラッとした声は出にくくなりましたけど、でも、ないものを追い求めてもしょうがないから、今の私の声が一番映える曲を書きたいなという考え方にシフトしています」
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)