矢井田 瞳「やっぱりギター持って歌ってるときが落ち着くし、思いを曲にすることで私は喜怒哀楽を確かめられる」

2022/09/07 08:00 配信

音楽 インタビュー

アルバム『オールライト』をリリースする矢井田 瞳   撮影=諸井純二

母一本で生きるという選択肢もよぎりました


メジャーデビューから丸22年。その道程を改めて振り返ってもらうと…。

「長かったようなあっという間だったような…。大きな波で考えると2回ぐらい、音楽を続けるかどうかで立ち止まったときがあったんですけど、2回とも人との関わりや、『楽しみにしてますよ』という声のおかげで前に進めたと思います。
1回目はデビューして5年目ぐらい。全部自分で抱え込みすぎちゃって、自分の実力のなさとか技術のなさに勝手にへこんじゃった時期があったんです。で、先輩ミュージシャンに相談すると『じゃあ誰かと一緒にやればいいんじゃない?』とアドバイスをもらって…。その頃の私は音楽イベントとかフェスに出るのが苦手だったんです。自分のファンじゃない人たちが集まっている場所でステージに立つのが怖かった。でもその先輩の言葉に背中を押されていろんなイベントやフェスに出たり、コラボレーションに参加したりしてみるうちに、“横のつながりがあるってこんなに楽しいんだ”ということに気付けて、そこから視界が広がりました。
 2回目はスランプとかじゃなく、母になった瞬間ですね。母一本で生きるという選択肢もよぎったという感じ。でもやっぱりギター持って歌ってる時が落ち着くし、思いを曲にすることで私は喜怒哀楽を確かめられたり、社会とつながってたんだなということに気付いて、また音楽を続けようって決心しました」

今では中学生にまで育った長女。「娘にとっては私が家で曲を作ってたり、リビングに楽器が転がってるという環境が当たり前なので、親の仕事に関して特に何とも思ってないと思います。スルーですスルー。何かもっとコメントしてほしいぐらい!」と笑う。

「音楽の触れ方一つにしても、今の10代の子たちは私たちの頃とは全然違いますよね。世の中のスピード自体が違うから。例えば彼女たちは音楽を単品で、それも短い秒数のキャッチーさで選んでいるようだけど、私はアルバムという形で音楽を楽しむのが好き。好きなアーティストのCDは物として手元に置いてね、歌詞カードをペラペラめくって、ライナーノーツや演奏者のクレジットも読み物として楽しみたいし、曲間のブランクも“ここだけ長くしているのは何か意味やこだわりがあるのかな”なんて考えたりしながら聴くのが好きだから。だから私も提供する側としてはそうやってこだわったアルバムを出したいという気持ちがあります。でも、それこそ娘たちのような世代、1曲1曲じっくり聴く習慣のない子たちの耳にも、ちょっとでも入って周波数が合ってくれればとても嬉しいなって思うし。ワンフレーズだけでも鼻歌を歌って楽しそうにしているのとかを聴くと、それも一つの音楽の効果だし素敵だなと思います。どっちがいいとか悪いとかじゃなく、うまく共存していけたらいいなぁって」

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