矢井田 瞳「やっぱりギター持って歌ってるときが落ち着くし、思いを曲にすることで私は喜怒哀楽を確かめられる」

2022/09/07 08:00 配信

音楽 インタビュー

アルバム『オールライト』をリリースする矢井田 瞳   撮影=諸井純二

目の前に人がいないのはやっぱりどこか寂しいんです


矢井田はライブ活動も活発だ。春から夏にかけて行った弾き語りによる全国ツアーを終え、10月にはアルバム『オールライト』を引っ提げた東阪ホールライブも予定。

「フルバンドでのライブをちゃんとお客さんの前でできるのは本当に楽しみです。メンバーはデビュー当時からずっと支えてくれている人たちでもありますし…。無観客とか配信ライブにも結構慣れちゃいましたけど、目の前に人がいないのはやっぱりどこか寂しいんです。いてくれさえすれば――いまだに客席側から声は出せないものの、みんなここ(目)から強いビームを出してくれるんですよ!(笑) 拍手や手拍子はもちろん、見つめる力に乗せてくれる思いというのは十分伝わっています。嬉しいです」

楽曲制作による表現活動を主体と考えるミュージシャンもいれば、ライブが好きで、新しいライブをするために新しい曲を作るという者もいる。先ほど、ファンに会いに行けないことが痛手だったというコメントもあったが、矢井田にとって音源制作とライブの関係というのはどんなものなのだろう。

「デビュー当時は、音源制作とライブって私の中で全然別物で。レコーディングするときはレコーディング用の脳みそ、ライブするときはライブ用の脳みそって感じだったんですけど…それが22年やるうちに、どんどんどんどん合わさって“一つの丸”になってきた感じです。今の時代のレコーディングって、音を重ねまくろうと思ったらいくらでもできますけど、そうじゃない、生に近い美しさを追求したいというか。サウンドはライブでの自然な聴こえ方を大事にして引き算したり、ライブでやるときのことまで考えてレコーディングするようになりました。なぜだか分からないけど自然とそうなっていきました。今は脳内の比重も、曲を作ることとライブで歌うことがちょうど同じくらい」

22年間のプロ生活の中で変化してきた、ファンへの思いも語ってくれた。

「やっぱり同年代のファンの方が一番多いのかな。最近では子供を連れて2世代で来てくれる人も増えました。何か…それこそ昔は、見に来てくれた人たちに対しても勝手に自分で線を引いてたというか、一人一人の顔が見えてなかった気がします。余裕も自信もなかったから。でも最近はパッと客席に目を向けると“ああ本当に音楽が好きで、週末の夜に音楽を選んで来てくれたんだ”“同じ時代を歩いてきた人たちなんだ”みたいな実感が込み上げて、グッときちゃいますね。22周年とか聞いても自分で驚いちゃってるくらいだけど(笑)、みんなの顔を思い出すと、やっぱり長く続けないと見えない風景というものがあるのかもなぁ…と思います」

取材・文=上甲薫




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