山本耕史、声優の仕事を通して「日頃のお芝居でも大切なことを学んだ」<ピノキオ>

山本耕史 撮影:永田正雄

小さな善悪は身近にたくさんある


――ジミニーはピノキオに善悪を教えるキャラクターですが、日頃善悪を意識されたりしますか?

大きな善と大きな悪は対極にあるけど、すごく近くに小さな善悪ってたくさんあるじゃないですか。しかも、その人の生き方によってかなり変わってくるんじゃないかなと思うんです。今は特にコンプライアンスが意識される時代で、ちょっとした発言が引っかかってしまうかもしれない。ただのコミュニケーションとされるのか、悪になってしまうのかとか、難しいところではありますよね。

――なるほど。時代やその背景によっても変わってきますしね。

そうですね。例えば、子ども同士で「貸して!」とおもちゃを取り合っているのも、どちらが善でどちらが悪か難しいじゃないですか。いざ貸してあげたら、もう他のおもちゃで遊んでいて「要らない」と言われたら、相手に向けた善はどうなってしまうのか…。

ダメなものはダメと言うけれど、子どもは自分が良いと思ったことを大切にできたらいいのかなと思いますね。父親が叱っているときは、母親は叱らないとか、逃げ場を残してあげるのも大事かなって思います。

顔が出ていないと成立しないんだな


――今回、声優の仕事を通して感じたことはありますか?

声だけで表現するという経験はまだまだ少ないということもあって、自分のお芝居のトーンって、顔が出ていないと成立しないんだなと思ったんですね。自分の思っている以上に抑揚をつけたり、伝える意識をさらに強調した方がいいなと感じて。

目が不自由な方々がお芝居を見に来てくださったりした際には、そういう表現の方が伝わりやすいかもしれないなと思ったんです。声のお芝居を通して、日頃のお芝居でも大切なことを学んだ気がします。

◆取材・文=横前さやか

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