【漫画】“トップじゃない”棋士のゆるい日常を描く新感覚将棋コメディが話題 将棋がわからなくても伝わる面白さ

2022/09/14 08:30 配信

芸能一般 インタビュー コミック

花四段にモデルはいない

「花四段といっしょ」ピアス穴も開けている花四段(C)増村十七/朝日新聞出版


――一般的に将棋漫画というとストイックな印象の作品が多いですが、「花四段といっしょ」の人々は雑念に支配されたり俗っぽかったり、いい意味で人間らしいと感じます。個性あふれるキャラ造形ですが、モデルはいるのでしょうか?

特定のモデルはいません。将棋の世界は狭いから、誰かを具体的にモデルにするとおそらくすぐわかってしまうので…。取材はしていますが、エピソードはそのままじゃなく、アレンジして使うようにしています。あといわゆる“内輪ノリ”にうまく乗っていくのが不得意なので、将棋好きだけが元ネタがわかって楽しめるような形以外を試してみたくて。作中に将棋の盤面を出さないというのもそのためです。

――そうなんですね。また花四段はピアスを開けていたり、ビジュアル面にもこだわりを感じますが。

花四段の外見は、自分の好きな要素をぎゅっと詰めています。フィクションなので、一般の棋士のイメージとは異なるファッションにしていますし、性的じゃなく魅力的に見えるようにしたくて、まつげなどで中性的な男性の造形を表現しています。 

周りのキャラクターは、とにかく花四段を立体的に見せるために、いろいろな関係性で配置しているという感じです。

――お気に入りのキャラクターはいますか?

記録係の由比ヶ浜ワタルです。はじめは全然出す予定もなくて、間を持たせるために置いてみたんですが、だんだん個性が出てきてすごくうれしいですね。

記録係の由比ヶ浜ワタル(C)増村十七/朝日新聞出版


「花四段」には和山やま先生の影響が大きい


――Twitterで連載を始め、コミックス第1巻も発売済ですが、印象的な読者からの反響はありましたか?

うれしい誤算だったのは、将棋が好きな方にも好意的に読んでいただいていることですね。「こんなわけないだろ」と思いながらも楽しんでいただけているのかなと思います。

――「花四段といっしょ」は、どこか時間がゆっくり流れているような独特な作風があると感じますが、キャラクターの行動や会話のやりとりで特に意識している空気感はありますか?

SNSで発表しているので、読みやすいようになるべく大きいコマでゆとりを持たせていることがあるのかなと思います。あと、正直に言うと「女の園の星」(祥伝社)という漫画、というか作者の和山やま先生の影響がかなりあります。登場されたとき、漫画界に激震が走ったんですよ。私に限らず色々な人が「今までなぜこれをやらなかったんだろう」と思ったと思います。誰でも読めるし、誰でも面白いと感じられるつくりになっているので、どうすれば自分でもそれができるかを考えたのが、この作品にも反映されているのかなと思います。

――確かに、似ているというわけでもないですが、どこか共通の空気は感じますね。

もっと厳しく直接の影響を指摘されても不思議ではないんですけど(笑)。そうなっていないのは、自分で頑張ってそっちに寄せようとしても、描いてる人が違うから違うものになってる。ある意味消化できているのかなと思います。でも、影響はすごくあります。

「女の園の星」書影(Amazonより)(C)和山やま/祥伝社