<四畳半タイムマシンブルース>クセ強キャラ×大胆かつ繊細なストーリーの融合で心を鷲づかみに

2022/09/16 07:10 配信

映画 アニメ レビュー

「四畳半タイムマシンブルース」より(C)2022 森見登美彦・上田誠・KADOKAWA/「四畳半タイムマシンブルース」製作委員会

森見登美彦の小説「四畳半神話大系」と上田誠の戯曲「サマータイムマシン・ブルース」が“悪魔的融合”を遂げて誕生した「四畳半タイムマシンブルース」がアニメ化。9月14日に第1話が配信され、懐かしの個性派キャラたちの“再集結”と大胆かつ繊細なストーリーに注目が集まった。今回、音楽、アイドル、ドラマや洋画・邦画、アニメと幅広いジャンルに精通するエンタメライターの田中隆信氏に、“一人称”の主人公同様、主観で第1話の魅力を独自レビューしてもらった。(以下、ネタバレを含みます)

同作の舞台は、灼熱の京都。壊れたクーラーのリモコンを巡り、大学生たちが突如出現したタイムマシンで昨日と今日を右往左往する様がコミカルに描かれる。9月30日(金)より3週間限定で全国公開され、ディズニープラスでは9月14日から配信限定エピソードを含む全6話が毎週水曜に独占配信される。

独自レビュー「ある意味必然のコラボ」

「四畳半タイムマシンブルース」より(C)2022 森見登美彦・上田誠・KADOKAWA/「四畳半タイムマシンブルース」製作委員会


「四畳半タイムマシンブルース」。このタイトルを見た時、アニメや映画、舞台、さらには小説が好きな人の中にピン!と来た人もいるのではないだろうか?

“四畳半”から思い浮かぶものの一つに、森見氏の小説「四畳半神話大系」がある。2005年に刊行された小説で、京都市を舞台に京都大学3回生の男子学生が、1回生の時に選んだサークルによって自らの大学生活をいかに変えていったか、という可能性が“一人称”で描かれている。したがって、主人公の名前は「私」。2010年にはテレビアニメ化され、全11話で放送された。

“タイムマシンブルース”から連想するのは、ヨーロッパ企画の舞台「サマータイムマシン・ブルース」。2001年に初演された作品で、手掛けたのはヨーロッパ企画の代表・上田氏。大学の「SF研究会」の学生たちは、前日にクーラーのリモコンがとあるアクシデントから壊れてしまい、猛暑の中ぐったりしていると、突然タイムマシンが現れる。壊れる前のリモコンを取りにタイムマシンで“昨日”に戻るが次々とアクシデントが…、という青春要素のあるSFコメディー。2005年にはメインキャストに永山瑛太(当時は瑛太名義)と上野樹里が起用され、本広克行監督によって映画化された。

その2つの個性的な作品が、まさに悪魔的融合を遂げて生まれたのが「四畳半タイムマシンブルース」だ。本作の脚本を担当している上田氏は、アニメ「四畳半神話大系」でも脚本を手掛けていることを考えると、時間を経てはいるが、ある意味必然的なコラボ=融合とも言える。

キャラクターの個性が渋滞中!

「四畳半タイムマシンブルース」より(C)2022 森見登美彦・上田誠・KADOKAWA/「四畳半タイムマシンブルース」製作委員会


舞台は8月の京都・左京区。盆地の京都の夏は酷暑、灼熱の毎日が続いている。おんぼろアパート・下鴨幽水荘で唯一クーラーのある部屋があり、「私」(CV:浅沼晋太郎)がそこに移れることになったが、悪友の小津(CV:吉野裕行)がリモコンに飲み物をこぼし、壊してしまった。それが“昨日”の出来事。

下鴨幽水荘は、「四畳半神話大系」でも登場するアパート。209号室にクーラーがあるということ、アパートのある場所は昔は沼地だったということ、それと大家がケチャという犬を飼っているというのは新たに加わった設定だ。

「私」をはじめ、悪友で天敵の小津、ヌシ的存在の樋口師匠(CV:中井和哉)といった下鴨幽水荘の住人たちと、1年後輩で映画サークル「みそぎ」でポンコツ映画を量産する黒髪女子の明石さん(CV:坂本真綾)、映画サークルのボス・城ヶ崎先輩(CV:諏訪部順一)、その城ヶ崎の右腕・相島先輩(CV:佐藤せつじ)、近所の医院に勤める歯科衛生士の羽貫さん(CV:甲斐田裕子)、そして謎多き人物・田村くん(CV:本多力)など、登場キャラだけでも個性が渋滞中。