人はなぜ道に迷うのか「KinKi Kidsのブンブブーン」/テレビお久しぶり#16

2022/09/16 21:31 配信

バラエティー コラム 連載

「テレビお久しぶり」(C)犬のかがやき

7年ぶりにテレビ番組を見るというライター・城戸さんが、TVerで見た番組を独特な視点で語る連載です。今回は、「KinKi Kidsのブンブブーン」(毎週土曜朝11:05-11:50、フジテレビ)をチョイス。

人はなぜ道に迷うのか「KinKi Kidsのブンブブーン」


方向音痴というのは困ったものである。生まれてからずっと方向音痴と付き合い続けている私は、たとえ何年住んでいる街であろうが、いつもと違うルートに入ってしまったら最後、決して家にはたどり着けなくなる。「どうして住んでいる街で道に迷うのか」「駅の方角さえ分かれば簡単じゃないか」というようなハラスメントをさんざ受けてきたが、そもそも、東西南北というのは人それぞれなのであって、そんな脆弱な基準をもとに指し示される道など信用に値しない。誰かの西は誰かの東、あなたの北は私の南である。太陽が東から昇るというのもちゃんちゃらおかしい。私にとって太陽とは、東から昇るときもあれば、西から昇るときもある。だからこそ美しいのだ。

というまったくの冗談をヘラヘラ思っていた矢先、KinKi Kidsの冠番組「KinKi Kidsのブンブブーン」内にて、街ゆく人々やゲストの方々から質問を募集し、専門家が答えて解決していくという何とも平和な「街かど質問大賞」というコーナーを、画面にパンダのウンコが映ったりするのに驚きながら眺めていると、「なんで方向音痴の人がいるのか」という質問が登場したのだ。これは俺のための質問だ、そう背筋を伸ばし、人間の脳の認知機能について研究しているという小林教授の解説に耳を傾けてみた。

空間認知は、”アロセントリックな空間認知”と、”エゴセントリックな空間認知”の2つの能力のバランスによって支えられているという。”エゴセントリック”というのは、自分を中心に空間を見る能力。自分から見て右、左、と判断する、空間認知には基本中の基本であり、必要不可欠な感覚であるといえるだろう。しかし、この”エゴセントリックな空間認知”にのみ頼って空間を把握していると、来た道を逆から歩くときに認知がエラーを起こしてしまう。こういう人が、いわゆる”方向音痴”に陥りやすいのではないか、と小林教授は語る。

対して”アロセントリックな空間認知”とは、空から見て自分の位置を把握する能力のことを指す。つまり、主観能力か客観能力か、といったところだろう。方向音痴たる人々は、主観で方向をとらえるあまり、客観的に自分がどこにいるかという視点が欠けている、ということなのだ。方向音痴の身からしても至極納得のいく解答だと言えるが、自分には”アロセントリックな空間認知”が足りていないのだと分かったところでどうすればいいというのか。小林教授は、”アロセントリックな空間認知”を鍛える方法として、ゲームが効果的であると話す。敵を倒しに行くだとか、宝箱を開けに行くだとか、目的をもって箱庭を探索することで、空間認識能力が鍛えられていくというのだが、私は龍が如くシリーズを中学生の時からやっているのにこの有様だから、きっと”アロセントリックな空間認知”が足りていないのだろう。

それにしても、自分にはアロセントリックが足りていない、という事実は、なんだかまったく悪い気がしない。道の分かるやつは、アロセントリックが足りている。それって少しダサくないだろうか。アロセントリックなんか気にせず、俺はエゴセントリックで突き進む。太陽の昇る方角は自分で決める。それこそがロックンロールだ。俺はもう、地図の言うことなんか聞かねえ!