<四畳半タイムマシンブルース>“今日”と“昨日”、身近な人物が複雑に絡み合うタイムリープの妙に脱帽

2022/09/29 14:54 配信

映画 アニメ レビュー

「四畳半タイムマシンブルース」より(C)2022 森見登美彦・上田誠・KADOKAWA/「四畳半タイムマシンブルース」製作委員会

作家・森見登美彦の小説「四畳半神話大系」と、ヨーロッパ企画の代表・上田誠の戯曲「サマータイムマシン・ブルース」が“悪魔的融合”を遂げて誕生した「四畳半タイムマシンブルース」。9月30日(金)の劇場公開を前に、9月28日にはアニメの第3話が配信され、“今日”と“昨日”を行き来する個性派キャラたちによる、ある種“複雑”で計算され尽くしたタイムリープに、瞬きをするのも忘れてしまった。(以下、ネタバレを含みます)

タイムマシンで過去(昨日)へ

「四畳半タイムマシンブルース」より(C)2022 森見登美彦・上田誠・KADOKAWA/「四畳半タイムマシンブルース」製作委員会


京都左京区にあるオンボロアパート「下鴨幽水荘」で唯一クーラーのある部屋「209」。そこに移り住むことができた主人公の「私」(CV:浅沼晋太郎)だったが、悪友・小津(CV:吉野裕行)が飲み物をこぼしたせいでリモコンがダメになってしまった。そんな時、アパートの中でタイムマシンを発見。アパートの住民や「私」が恋心を抱いている明石さん(CV:坂本真綾)らと話し合った結果、“昨日”に戻って壊れる前のリモコンを取りに行こうということに。“昨日”に乗り込んだのは、小津、アパートのヌシ的存在の樋口師匠(CV:中井和哉)、陽気な歯科衛生士・羽貫さん(CV:甲斐田裕子)の3人。タイムマシンは“今日”に戻ってきたが、乗っていたのは「諸君も遊びに来たまえ」という樋口師匠の書き置きだけ。というのが第2話までのお話。

過去が変わってしまうと、未来、つまり“今日”が変わってしまい、今の自分たち、宇宙は消滅してしまうと考えた「私」たちは、リモコンを“今日”に持ち帰ってくることを諦めて、過去を変えないために「私」と明石さんが“昨日”に乗り込んでいった。“昨日”に到着したが、明石さんは乗り物酔いで今にも嘔吐しそうなくらいの絶不調っぷり。それはなんとか耐えながらも、早速“昨日”の人たちに遭遇してしまった。過去を変えないためにも一番避けたかった事態が…。

さらにハイテンションな羽貫さん(タイムスリップしてきたほう)が「タイムマシン最高! 過去を楽しもう!」と現れる。明石さんがごまかそうとするが埒(らち)が開かないので、「さては、酔っ払ってますね!」と言って明石さんは羽貫さんをトイレに連れていくという強硬手段を取った。「私」もそれに相乗りし、なんとか窮地を凌ぐ。

ミッションは「辻褄を合わせること」

「四畳半タイムマシンブルース」より(C)2022 森見登美彦・上田誠・KADOKAWA/「四畳半タイムマシンブルース」製作委員会


出だしからハラハラしっ放しの展開だが、問題はそれだけではなかった。すでに羽貫さんは“昨日”の世界の中でいろんなことに関わってしまっているらしく、それが昨日の世界の中での“起こってしまった出来事”となっていたことに気付く。つまり、未来=今日を変えないためには、羽貫さんや小津、樋口師匠が“昨日”の中で起こしてしまったことを、ちゃんと起こさないといけなくなったということ。

「私」と明石さんに課せられたミッションは“辻褄を合わせること”に変更。そこでいろんな事実が明らかになる。樋口師匠が銭湯でシャンプーを盗まれたと大騒ぎしていたが、実は“盗まれる前に自分で盗んだ”という自作自演的なひとり相撲だった…ということ。

“昨日”の「私」は銭湯を早めに切り上げ、古本市にいるはずの明石さんに会いに行ったわけだが、「私」の不審な行動に気付いた“今日”の小津は、“昨日”の「私」を追い、それを阻止するために“今日”の「私」が“今日”の小津を追うというややこしい展開に。明石さんに気付かれないように付け回す「私」の姿はどう見ても不審者だと、“今日”の「私」は改めて思った。結局、明石さんに声をかけられなかった自分の姿を見せつけられ、小津にもそれを見られるという最悪の結果となった。

それでもリモコンは銭湯で明石さんに手渡していたので、元の場所に戻して未来に帰ろうとアパートに戻ると、うなだれる明石さんの姿が。なんと、タイムマシンがなくなっている。犯人は樋口師匠と羽貫さんだと想像できるが、リモコンを明石さんに手渡していた時に羽貫さんが不敵な笑みを浮かべていたことを考えると、悪い予感しかしない。「“昨日”のクーラーのリモコンを“今日”に持ってこさせない」というだけのミッションが、それだけでは済まなくなってしまった。