ハロウィーンに向けて、マーベル・スタジオが新しく制作した単発作品「マーベル・スタジオ スペシャル・プレゼンテーション:ウェアウルフ・バイ・ナイト」が、10月7日に配信開始。今回、音楽、アイドル、ドラマや洋画・邦画、アニメと幅広いジャンルに精通するエンタメライターの田中隆信氏に、“異色のMCU(マーベル・シネマティック・ユニバース)最新作”の魅力を独自レビューしてもらった。(以下、ネタバレを含みます)
スーパーヒーローたちが活躍する世界とは別に、モンスターと彼らを倒す“ハンター”が住む闇の世界があった。そのハンターの中でもブラッドストーン家の家長ユリシーズは、最強の石と呼ばれる神秘的な武器“ブラッドストーン”を使って多くのモンスターを狩ってきた。
そのユリシーズが死去し、“ブラッドストーン”を継承するべく、世界中からすご腕のハンターたちが告別式に現れる。あるモンスターを倒すことが、この石を手にできる条件であり、それを手にすることができるのは一人だけ。ハンター同士が戦うことを避けるわけにはいかない、まさに命懸けの競技だ。
主人公は、告別式にやってきたハンターの一人である“ジャック・ラッセル”。演じているのは、「天国の口、終りの楽園。」「モーターサイクル・ダイアリーズ」などに出演したガエル・ガルシア・ベルナル。現在ディズニープラスで配信中の「キャシアン・アンドー」で主演を務めるディエゴ・ルナの幼なじみとしても知られる俳優だ。
この物語のヒロイン的存在として登場しているのがエルサ・ブラッドストーン(ローラ・ドネリー)。ブラッドストーン家の娘で、本来であればエルサがその石を受け継ぐところだが、継母とは不仲で20年間実家に帰ることはなかった。石を受け取るために実家に帰ることを決意し、ハンターたちと共にこの危険な競技に参加する。
まず特筆すべきことは、本作はMCU初のホラー作品で、大部分がモノクロであるということ。おなじみのMCUタイトルロゴもモノクロで、オオカミが爪で引っ掻いたような演出があり、オープニングからホラー映画のテイストが満載となっている。モノクロ主体ということもあって、1930年〜1940年代の古典映画“ユニバーサル・モンスターズ”の「魔神ドラキュラ」「フランケンシュタイン」「狼男」へのオマージュが感じられる。
ホラー好きな人であれば、画質、照明を効果的に使った演出、おどろおどろしい音楽などを懐かしく思うのではないだろうか。モノクロ映像によって少し衝撃は緩和されているが、斧で腕を切り落としたりするグロテスクな表現もあって、R15の年齢制限がかけられている。
監督を務めるマイケル・ジアッチーノは、「ドクター・ストレンジ」「ローグ・ワン/スター・ウォーズ・ストーリー」「スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム」「ソー:ラブ&サンダー」の音楽を手掛けている作曲家で、本作が長編作品の初監督作品となっている。もちろん音楽も担当しており、古典ホラー映画のような緊張感をあおるような音楽や臨場感のあるBGMをうまく活用しているのも大きな特徴と言える。
話を登場するキャラについて戻すが、ジャック・ラッセルは石が目的でブラッドストーン家の告別式に来たのではなく、旧知のモンスターを助けることが目的だった。石が目的ではなく好戦的でもないジャックと利害関係が一致したエルサは、協力してモンスターを逃すことに。そのモンスターが“マンシング”だった。
マンシングは植物系のモンスターで、マーベル・コミックのアメコミ作品を原作に「巨大怪物 マンシング」という単独作品も制作されたこともあった。原作コミックでは、元々は人間だったが血清の副作用でモンスターになってしまったらしいので、その設定が生かされているのか、ジャックは彼のことを“テッド”と呼び、言葉は発しないが意思疎通が取れているのが分かる。
ジャックもブラッドストーンに触れて、モンスターであることが判明するので、似た者同士でもあるのだろう。マンシングは恐ろしく強いモンスターだが、ジャックと話している時や、エルサが名前を呼び掛けた時の表情はどこか優しさや穏やかさがにじみ出ていて、憎めないキャラといった印象を受けた。
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