──今回、ドラマ化に際しての描き下ろしも掲載させていただきます。このエピソードは「元カレと三角関係」のアキラ視点のお話ですが、どんな思いで描かれましたか?
実は当初アキラ視点というのも決まっておらず、「ジュンが瀕死になってからミカのところに行くかどうか迷って、決断するまでの話」なども考えたのですが、役者さんが演じて下さることもあり「全員を出したいな」と思い、三人がいる家で将棋でもさせてみる…という案が出てきました。ただ、その段階でもアキラのモノローグはなく、淡々と将棋をする話で、結果としてちょっとシュールな話になっていたように思います。そこで担当編集の方が、私らしい心情描写を加えてはどうですかと言って下さったことで、あのようになりました。
アキラの心情を描く中で、漠然と捉えていたキャラの内面が言語化されていったのが面白い経験でした。「アキラのような人間は、ジュンのような粗暴な人間に対して、嫌悪感だけでなく実は憧れもあったりするかも。だからこそ対抗意識も生まれてるのかもしれない…」というように。結果的に、全員の対比をしつつ、個別のキャラの造形を深堀りすることができて、短いながらも自分としては気に入った作品になりました。
──今後はどのような作品を描いていきたいですか?
今までの私の短編集は、SNS上で多くの方に見てもらうことが狙いだったこともあり、「普通の人達」が出来事に巻き込まれていくような話が多かったです。ただ、長い作品を作るとなると「良いキャラクター」というのは避けては通れない要素ですし、私自身もそのようなキャラクターに魅力を感じて育ってきたので、キャラクターが主導していくような物語にも挑戦してみたいです。また、影響を受けたSF作品の話でも触れましたが、個人のドラマだけでなく、社会や世界などの大きな構造を描いた作品にも挑戦したいと思っています。
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