コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、かわいい親友にコンプレックスを抱く少女の思春期ならではの葛藤と甘酸っぱい恋愛模様を描いた作品『十五の肖像』をピックアップ。作者の猪狩そよ子さんが10月7日にこの作品をTwitterに投稿したところ、3.3万以上(10月28日現在)の「いいね」が寄せられ反響を呼んだ。この記事では、猪狩そよ子さんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについてを語ってもらった。
同じ高校に通う瑠里と典子は、髪型や持ち物もすべてお揃いにするほど仲の良い親友同士。おとなしく地味な瑠里とは対照的に、かわいくて目立つ典子は常に男子からの注目の的となり、女子の目の敵にされていた。しかし、嫌味に対してもはっきりと意見を言い返す典子のたくましい姿が瑠里の目には新鮮に映り、瑠里は典子に憧れを抱いていた。
ある日、瑠里はクラスメイトの男子・宮川に声をかけられ、音楽室に連れられる。2人きりでドキドキしたのも束の間、宮川から典子に片思いしていることを告白され、「オレにピアノ教えてくれ」と頼まれる瑠里。期待しすぎた自分にがっかりしながらも宮川にピアノを教え始めた瑠里は、典子と通っていたピアノ教室の記憶がフラッシュバックする。
ピアノを弾くことが好きだった瑠里は同じピアノ教室に典子を誘い、いつも楽しみに通っていた。その教室で仲良くなった男子・竹内に好意を寄せていた瑠里だったが、典子が二人の仲をからかい「つきあっちゃえばいーのに!」と言ったのをきっかけに、竹内から典子の好きな人を聞かれた瑠里。竹内の好意が典子に向いてること知ってショックを受けた瑠里はピアノ教室を辞め、好きになる相手がいつも典子に惹かれていく現実に、瑠里の中でいつしか典子のことを疎ましく思う感情が芽生えていた。
宮川にピアノを教え始めて数日が経ち、徐々に宮川を意識するようになっていた瑠里。「典子のことを好きな男をもう好きになりたくない」と葛藤する中、とあることをきっかけに、事情を知らない典子がクラスメイトの前で瑠里と宮川の仲をからかうように声をかける。ピアノ教室での出来事が蘇った瑠里は苛立ちを募らせ、「私 典子のそーゆうとこ 嫌」と言い放って教室を飛び出し…。
多感な15歳の少女たちの、思春期ならではの複雑な心情を繊細に描写した本作。甘酸っぱい恋心や青春たっぷりの“胸キュン”ストーリーも話題を呼び、Twitter上では「素敵なお話…」「心がキュンキュンしました」「恋愛に友情、青春がギュッと凝縮された甘酸っぱい感じ最高」「気持ちわかる」「スーッと心の奥に刺さった感じがします」「全ての女の子に読んで欲しい!」など多くのコメントが寄せられ、注目を集めている。
――『十五の肖像』を創作したきっかけや理由があればお教えください。
この作品を描いた時私は20代後半だったのですが、プロデビューが19歳だったので読者さんと自分の年齢が離れていってしまうことに不安を感じていました。(当時の少女漫画業界は作家の感性の若さ、瑞々しさなどが重視されていたように感じていたからです)
自分がこれからどんどん年を重ねていったら若い頃の気持ちを忘れてしまうかもしれない、
忘れてしまう前に思春期に自分が感じたことを漫画にしておこうと思いこちらの漫画を描きました。
――『十五の肖像』では、親友に対する嫉妬や羨望の気持ちなど、思春期ならではの女の子の心情が繊細に描かれているのが印象的です。瑠里と典子のキャラクターは、どのようにして生み出されたのでしょうか。
ありがとうございます。恥ずかしながら瑠里は高校生の時の自分がモデルです。典子のような男の子に人気のかわいい女友達がいました。漫画のようにその子に想いを寄せる男子に辛い恋をしたことはないですが(笑)、ふとしたことで扱いの差を感じたことがあり、その時のもやもやを物語としてもっと印象的になるようにネームで膨らませていきました。
典子は「見た目が可愛くて気が強い」という私が大好きなタイプの女の子を楽しく描きました。
――『十五の肖像』 の中で、猪狩そよ子さんが特に思い入れのある(気に入っている)シーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。
瑠里が教室で男子にからかわれた時、はじめて「典子のそーゆうとこ 嫌」と言ってしまったシーンです。
年齢を重ねてくると、自分の平凡さが身に染みて「自分が思うようなことは大体他の人も思っている」とわかってくるのですが瑠里は自分だけがドロドロした感情を抱えていると思い込んで落ち込んでいるのでそういう視野の狭さ、思い込みの激しさが思春期ならではでかわいいなと思います。
――本作が収録されている『誰も知らない29日-片恋憧憬短編集-』には、本作以外にも“片想い”をテーマに切ない恋物語を描いた漫画が多数収録されています。猪狩そよ子さんにとって、恋愛漫画を描くときのこだわりや、意識していることはありますか?
自分が好きな少女漫画は主人公が「うんうん気持ちわかる!応援したい!がんばれー!」と思える子のことが多いので、自分で描くときも読者さんが主人公に共感しやすい女の子になるように気をつけています。
具体的には冒頭10ページくらいで物語中の人間関係での立ち位置や考え方、悩みなどをわかりやすく描くように心がけています。また、10代の女の子向けの媒体に載せていただくときは物語を通して少しでもいいので最後に主人公の成長を感じられるようにして終わらせるようにしています。
――今後の展望や目標をお教えください。
長らく『花とゆめ』という少女漫画雑誌で活動していたのですがSNSの影響が大きくなって訴求できる読者さんの幅が広がっているように感じるので、学生が主人公の漫画だけでなく、もっと色々なジャンルに挑戦していきたいなと思っております。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
こちらの『十五の肖像』を描いていた時はなかなか結果を出すことができず、漫画家という仕事をあきらめようか迷っていた時期でしたので10年の時を経てこんなにたくさんの方から反響をいただけて本当にびっくりしました。昔の自分が報われたような気持ちになれてとても嬉しかったです。これからも読者さんにときめきをお届けできるように頑張りたいと思いますのでよろしくお願いします!
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