濃いキャラな書店員のナゾトキが痛快!『レジまでの推理 本屋さんの名探偵』/佐藤日向の#砂糖図書館

2022/10/29 20:00 配信

アニメ 連載

佐藤日向※提供写真

声優としてTVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』などに出演、さらに映像作品や舞台俳優としても幅広く活躍する佐藤日向さん。お芝居や歌の表現とストイックに向き合う彼女を支えているのは、たくさんの本から受け取ってきた言葉の力。「佐藤日向の#砂糖図書館」が、新たな本との出会いをお届けします。
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本屋は、みなさんにとってどれほど馴染みのあるものなのだろうか。

私にとっての本屋は、たとえば大型ショッピングモールに入っていれば絶対に足を運びたいし、初めて降りた駅にある本屋はどんな個性があるのか気になって、数分でも足を踏み入れる大好きな場所だ。

今回紹介するのは、似鳥鶏さんが描く『レジまでの推理 本屋さんの名探偵』という書店員にフォーカスした作品だ。"書店員さん"という存在は、本の知識が豊富で、レジでお金を払ったら本を渡してくれる人、という認識が強いが、彼らにも日常はあり、その裏側は多忙である。彼らの日常に起こる事件の数々が、「ポップ姫」と呼ばれるくらい本のポップを書くとすぐさまその本が完売するくらいの腕を持つ店長によって、軽快に解決されていくのが本作。本屋さんを舞台にした、短編連作の推理小説だ。

青井というバイトの男の子を中心に物語は進んでいくのだが、この青井の思考が一癖も二癖もあり、読み進める手が止まらなかった。本作は作中にいくつか注釈が入っているのだが、良い意味でものすごく適当で面白いので一つ紹介させてほしい。

「スリップ」という言葉の注釈にはこう書いてある。「本に挟まっている細長い紙。レジで回収された後は、細かく刻まれてサラダの具になり、バイト店員の賄いに出される。」――「んなわけ」と心の中でツッコミを入れつつ、青井の主観や、彼が日常でもこんなジョークを言うんだろうな、と感じられて、他の本にはない特殊な楽しみ方ができる作品だった。

この作品の見どころは、登場する書店員さんの個性的な性格でもあるのだが、本作を読むまで、私は書店員さんの日常についてそこまで深く考えることはなかった。そもそも本屋は、仕事と仕事の合間で時間が空くとフラッと立ち寄れる場所で、私にとってリフレッシュの時間といえば本屋にいる時間である。これは本好きにはわりと普通の時間の潰し方かもしれない。本屋さんにいると時間はあっという間に過ぎるため、文字通り時間が溶ける感覚があり、本を選ぶ瞬間は自分1人の特別な時間だ。

本屋の面白いところは、本屋によって旬の作品以外を紹介してくれるポップの楽しみがあるところや、洋服屋さんと同じで書店員さんのセンスを感じられるラインナップを見て回れるところだ。まるで服屋のウィンドーショッピングのようにライトに楽しめるのも魅力の一つだろう。そこに、本作のような個性的な書店員がいるかもしれないと想像すると、より本屋に足を運ぶ楽しみが生まれた。

そして、本を探すのが苦手な私は、買うものが決まっているとオンラインで購入をしがちだが、本作を最後まで読んで、ちゃんと本屋で購入をしたいと強く思った。タイトル「本屋さんよ、永遠に。」という言葉通りである。

本編を読んだあとのあとがきを読むと「青井が愉快なキャラクターなのは、この作家さんの言葉選び自体が面白いからなのだ」と最後の最後まで楽しめる本作。今後も本屋さんが永遠に続くためにも、ぜひお近くの書店でお手に取って頂きたい。

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