テレビ大好きイラストレーター・渡辺裕子さんが、お気に入りの番組をかわいいイラストで紹介する連載「いつもテレビをみています」。第5回は「マツコの知らない世界」(毎週火曜夜8:57 - 10:00、TBS系)をチョイス。
ポテトチップスや唐揚げなど、ごく当たり前に近くのスーパーやコンビニでおいしいものが売っているのに、もっとおいしいものがあるのではないかと日本中を飛びまわり、毎日それを食べ続ける人がいる。好きすぎて、そのことに生活のすべてを捧げてしまっている人がいる。「マツコの知らない世界」に出てくる人たちは、やっていることがとにかく極端。マツコ・デラックスさんの愛のあるツッコミに笑い、あきれたり驚いたりしながら見ています。
好きなものにはまり込むことをよく「沼にハマる」と言う。なんだか気になって爪先を入れてみた水たまりが、実は深く底の見えない沼で、それに気づいた時にはもう肩までつかっていて、そのままズブズブと潜っていき、出られない。毎日同じことを何年もやり続けるとか、莫大な交通費を使ってあちこちに出かけるとか、沼にハマってしまった人たちは外から見ると大変な生活なんだけれど、たぶん彼らにとってはこの沼はいい湯加減の温泉、あるいは二度寝の布団、心地よくて出たくない場所なんだろうな。
うっとりと「自分たちが囚われている沼=マツコも私たちも知らない世界」について語る出演者たちは、みんな笑顔。彼らは好きに向かって突き抜けたことによって、本を出したり、こんな風にテレビに出るほど有名になったりと大きく人生が変わったけれど、それは二次的な喜びで、ただ好きな沼にいるだけで幸せなんだろうなあ。
「私は近くのスーパーで買えるようなものでじゅうぶん満足してるしー」と思いながら、ついうっかり彼らが熱く語る品物について、スマホで取り寄せ方法を調べたり……してるのは私だけじゃないですよね?一度試しに注文してみるだけと、魔除けの呪文のように自分に言い聞かせながら。大丈夫大丈夫、あの世界にはハマらない……でも、ハマった先の世界も見てみたい気もしています、ちょっとだけ。
■イラスト・文/渡辺裕子
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