コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、甘いものの誘惑に負けそうになる少女と巨大化した虫歯菌によるバトルを面白おかしく描いた作品『虫歯』をピックアップ。作者の南田冬さんが10月18日にこの作品をTwitterに投稿したところ、1.2万以上(11月14日現在)の「いいね」が寄せられ反響を呼んだ。この記事では、南田冬さんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについてを語ってもらった。
和菓子屋の一人娘・佐藤アマミは、甘い食べ物が大好きな女の子。ある日、アマミの前に突如、巨大化した虫歯菌の化け物が現れる。アマミがチョコレートを食べようとすると睨みをきかせ襲い掛かろうとする虫歯菌。2人の攻防が続くも、21年間スイーツと共に生きてきたアマミにとって目の前にあるスイーツが食べられないという状況には到底耐えられず、ついにアマミは虫歯菌の目の前でチョコをかじってしまう。
その後、虫歯菌にツルハシで襲われたアマミは全治3カ月として入院することに。病院食に飽き飽きし、隠し持っていたお菓子をこっそり食べようとするアマミだが、そこに甘味食を許さない虫歯菌が再び現れる。虫歯菌による度重なる嫌がらせに激怒するアマミは、3カ月間完全に甘いものを絶って無事にケガを完治させると、次に虫歯菌を撲滅するべく歯科医院に直行したのだった。
道中、夏の耐えがたい暑さに「かき氷とか最高だなあ!!」と考えるアマミの前に、今までとは違った姿をした虫歯菌・悪玉菌が現れる。次の瞬間、悪玉菌に襲われそうになるアマミ。それを咄嗟に守ったのが、これまでアマミに攻撃を仕掛けていた虫歯菌・善玉菌だった。嫌がらせかと思われた善玉菌の過去の行動は全てアマミの歯を守るためだったにも関わらず、朝から晩まで甘いものを食べて善玉菌の活動を全部邪魔していたのだ、と初めて気づくアマミ。そんな中、善玉菌は悪玉菌の一撃にやられ、瀕死となってしまう。その隙に自身も回復を試みる悪玉菌は、てきぱきと宇治金時白玉アイスかき氷を作り、アマミに食べさせようとして…。
スイーツ三昧な少女が、甘いものが大好きなせいで虫歯菌である悪玉菌と善玉菌を“口内バトル”させてしまう様子を面白おかしく描いた本作。虫歯についてわかりやすく学びを得られる作品ながら、ギャグ要素がふんだんに散りばめられている作風も話題になり、Twitter上では「おもしろかった」「最高」「全ページ面白い」「最近読んだツイッター漫画で一番好き」「善玉菌のインパクトが強すぎる」「道徳の教科書に載ってたら小学生の時に歯磨きの大切さを学べたのに...」「虫歯には気をつけます」などのコメントが寄せられ、注目を集めている。
――『虫歯』を創作したきっかけや理由を教えてください。
何か漫画を執筆しようと思った時期にちょうど身内が虫歯になってしまい、毎週仕事の合間を縫って歯医者に向かう姿を見て「虫歯とはしつこく理不尽で恐ろしいものだ」と強く感じました。私は幼少期に一度なった以外では虫歯の経験はないのですが、今後怠惰な生活を送ってしまえばいつでも“虫歯”に襲われてもおかしくない、という恐れが私にこの作品を描かせました。
――“虫歯菌”をテーマにした本作では、主人公・アマミが善玉菌と悪玉菌に挟まれ、甘いものの誘惑に何度も負けそうになる姿が面白おかしく描かれています。これらのキャラクターはどのようにして生み出されたのでしょうか。
まずはストーリーやキャラクターを一切考えず「大量の甘い物を食べて寝たら、最悪の虫歯になって物凄くデカい虫歯菌がやってくる」というワンアイデアで冒頭を描き、そこから連想される人格やエピソードをキャラクター達に付け足していきました。
アマミについては“デカすぎる虫歯菌に狙われるほどの超甘党”なので“どんな逆境に置かれても甘いものを優先する”という行動原理を設定し、虫歯菌の方はアマミがある意味で超人なので逆に我々に近い論理を持って動くキャラクター…つまりアマミというボケに対するツッコミであってほしいという意図でそのようにキャラ付けしました。描きはじめはもっと違う…“飛び道具”のようなオチが用意されていたのですが、編集者様に相談させていただいたところ展開が変わりました。そこで初めて虫歯菌に善玉と悪玉がいる要素を加え“味方側”であると明確に示したことで一気に善玉菌のキャラが立ったように感じます。あまりにもありがたすぎ。
――本作ではギャグ要素も取り入れながら、善玉菌と悪玉菌それぞれの役割が漫画でわかりやすく描かれているのが印象的です。南田冬さんにとって、ストーリーや登場人物を創作する際のこだわりはありますか?
そういう設定の具体的な作品を挙げるわけではないのですが「江戸時代にはまだ恐竜が生き残っていた」とか「気付かないだけで、人類の数%は超能力を使える」…みたいな現実の要素をうまいこと解釈して歪めた虚構が大好きなので“現実の要素を絡めた大嘘”をやりたいと常々思っています。なので物語の出発点は日常の中の“あるある”を使いがちです。この漫画で言うなら「甘いものを食べたら虫歯になる」や「口内には善玉菌と悪玉菌が存在している」が現実の要素(又はあるある)で、「めちゃくちゃデカい虫歯菌が窓を叩き割ってやってくる」「菌が巨大化してツルハシと削岩ホイールで鍔競り合う」が嘘です。
登場人物はあまり拘りがなく、長時間原稿に向き合う都合上、見た目が好きなキャラで固めています。オチとかネタとか構造のための装置として都合よく設定しがちなので気を付けたいです。キャラの性格を守るために予定していた展開が変わるくらいの方が素晴らしい漫画だと思っているので、そこは頑張りたいです。
――『虫歯』の中で、特に思い入れのあるシーンやセリフはありますか?
弱った悪玉菌がアマミに宇治金時白玉アイスかき氷を食べさせようとしてアマミも「本当の夏始まっちゃってる」などと宣い、見事食事を中断させられるシーンは大好きです。どこからかき氷が出てきたのかはまぁ…置いておくとして、キャラの行動原理に則ってシーンが作れたと思うので、ここはこれで満足です。
――今後の展望や目標を教えてください。
あんまり大それたことは言えませんが、もっともっと腕を上げて面白い漫画を描いて、読んでくれる皆さんに楽しんでもらって、応援してくれる友達とかもニコニコにして、漫画賞もドカスカ獲って、単行本もザクザク出して、大金持ちになって幸せになりたいです。
――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。
南田冬です。いつも作品を楽しんでくださってありがとうございます。何かと辛かったりしんどい日々もあったりする中で、少しでも私の漫画が皆さんの心の癒やしになればと思ってます。なので、雑誌に載ったら「一番面白かった」でアンケートを出し、単行本が出たらその日に買うようにお願いします。漫画アプリだったら「いいね」みたいなのあると思うんで連打してください。今のうちから。こういうのは今のうちから言っておかないと忘れると思うから。今のうちから。こういうのって早め早めから言っておくのが大事だから。どうか頼みますよ。後生ですから。あなた達しかいないんですよ。
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