【漫画】不良少女と周りに疎まれる親戚の2人暮らしを描いた漫画、"居場所のない"少女が徐々に心を開く様子が「涙腺がバグった」と話題

2022/11/28 18:30 配信

芸能一般 インタビュー コミック

親に見放された不良少女の苦しさが痛いほどわかる!仲紙さんの『不良少女は蓋をされる』が話題画像提供/仲紙

コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、“親に見放された”不良少女が親戚中から”煙たがれている”青年に引き取られ、共に暮らす中で、少しずつ心を開いていく様子を描いた作品『不良少女は蓋をされる』をピックアップ。作者の仲紙さんが2022年10月28日にこの作品をTwitterに投稿したところ、3.3万以上(11月15日現在)の「いいね」が寄せられ反響を呼んだ。この記事では、仲紙さんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについて語ってもらった。

「私は…何もできない子供だ」親に見放された苦しみや自己表現のできなさを繊細に描く

『不良少女は蓋をされる』より画像提供/仲紙


子供に優秀さを求める両親のもとに生まれた少女・花梨は、姉弟のように両親の期待に応えられないことから、家庭内で息苦しさや居場所のなさを感じ不良少女となる。「いつか、私を分かってくれる」と信じていた花梨だったが、「もう帰ってこなくていいから」と両親から見放され、親戚中から煙たがられている青年・礼のもとへ預けられることになる。

同居生活が始まるも、礼とはほとんど顔を合わせることはなく、暇な時間を過ごしていた。しかし、花梨にとって田舎の山奥で自由に生活している礼は”立派な大人”であり、親たちが言う「ロクでもない男」だとは思えなかった。それに対し、一人では何もできない”子供”な自分に嫌気がさしていた。

徐々に「嫌いじゃねーわ」「うち居ていいからそのまま家事できるようになってよ」などと”付かず離れず”な関係で構うようになる礼に、花梨が少しずつ心を開いていく様子が描かれている。

「両親が自分を見捨てるようなひどい人間でも心からは嫌いになれない」という不良少女・花梨の苦しさや辛さを描いた本作。また、ある種似た者同士な礼との”付かず離れず”な関係性も共感を呼びTwitter上では「花梨には幸せになってほしい」「世界に引き込まれる」「めちゃくちゃ泣けた」「続編、気長に待ってます」などのコメントが寄せられた。

「漫画を描く楽しみは『目に見えないものを表現する』こと」作者・仲紙さんが創作の裏側を語る

『不良少女は蓋をされる』より画像提供/仲紙


――『不良少女は蓋をされる』を創作したきっかけや理由があればお教えください。

自分は漫画を描くときにキャラクターデザインから入ることが多くて、「不良少女」もらくがきをしていてなんとなく登場人物の「花梨」と「礼」を描いたときに絶対にこのキャラで漫画を描きたいと思ったのがきっかけかなと思います。

“家族に見放された不良少女が親戚に預けられる”という設定は前に連載していた「アシチガイ」というWeb漫画に出てくるキャラクターが元になっていて、そこから物語を再構成して制作しました。本編に入れられなかったものなので、こうして形にできてよかったなと思います。

――『不良少女は蓋をされる』では、どことなく似たもの同士の2人が徐々に心を開いていく様子が印象的です。不良少女・花梨と家主・礼のキャラクターは、どのようにして生み出されたのでしょうか。

先ほどの回答と被ってしまいますが、なんとなく絵を描いていて出来上がったキャラクターが良いなと思ったのがきっかけです。そこからキャラの普段の様子やしゃべり方、生い立ちや性格などを想像し一番しっくりくるものを少しずつ付け足していった感じです。

――『不良少女は蓋をされる』 の中で、仲紙さんが特に思い入れのあるシーンやセリフがあれば、理由と共にお教えください。

物語的に言えば家を飛び出した花梨に礼がかけた「世界が悪いよ」のシーンです、家族に見放された花梨の救いになったシーンなのでここが盛り上がりになっているかなと思います。

個人的に思い入れがあるシーンは、上記に続く「この瞬間の責任を全部お前に背負わせたこのクソみたいな世界が悪い」です。礼は、好き嫌いはあるものの誰かを悪だと糾弾したりはしません、この表に出にくい彼の思想がうまく表現できた台詞かなと思います。

また、シーンや台詞ではないですが、花梨の「いつか私を分かってくれるって」「人の人生めちゃくちゃにしやがって」など誰かへの不満の言葉を一人の時にしか言わないいじらしさが好きだなと思っています。ちなみに話の中で花梨が誰かに向かって言った台詞は礼の半分以下となっており、彼女の自己表現ができない性格が現れているので、改めて読んでみると面白いかもしれません。

――仲紙さんは本作以外にも”付かず離れず”な人間関係で過ごす物語を多く描かれているようにお見受けします。仲紙さんが、漫画を描いたりテーマを決めたりするうえでこだわっていることや、意識していることはありますか?

自分は漫画を描く楽しみは「目に見えないものを表現する」ことだと思っているので、キャラクターの心情や関係性は丁寧に描くようにしています。逆にそこにこだわりすぎて読者さんに伝わらなかったり、分かり辛い表現になったりしがちなのでその辺を今後うまく表現できるようになれればと思っています。

しかし、自分は何よりもキャラクターが好きで好きで描いているので、もちろん大事な部分ではありますが、分かりやすさや盛り上がりを最優先して創作をすることは今後もないかなと思います。

――今後の展望や目標をお教えください。

個人の活動としましては、個人サイトで連載している「物売りアンネと竜の街」の更新です。また2023年には新しく描きたい読み切りがすでに2本ありますので、そちらの制作に向けて準備していきたいと思います。去年から始めた電子書籍化もありがたいことに多くの方に読んでいただけているので、今後も電子(書籍)での展開をしていきたいと思います。

――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。

いつも漫画を読んでくださって本当にありがとうございます。以前別の場所でも言いましたが、拙いところもたくさんある私の作品を”楽しんで読んでくれる”皆さんがいるからこそ私も楽しく活動が続けられています。私は「創作は会話」だと思っていますので、面と向かって話すことは難しい皆さんの考えや、好きなもの、嫌いなもの、心打たれるもの、たくさん教えてください。

これからも読者の皆さんに楽しんでもらえるよう精進していきたいと思います。本日は貴重な場をいただきありがとうございました。今後もぜひよろしくお願いいたします。