80年代を代表する映画『セント・エルモス・ファイアー』。エミリオ・エステベス、ロブ・ロウ、アンドリュー・マッカーシー、デミ・ムーア、ジャド・ネルソン、アリー・シーディ、メア・ウィニングガムという当時の注目若手俳優が共演した青春群像劇は、日本でも大ヒットを記録した。この名作が、豪華声優陣によって新録され、蘇る。
この注目の新録版で、デミ・ムーアが演じる"ジュールズ"を演じるファイルーズあいに作品のことや、新録版に対する気持ちを語ってもらった。
――80年代の作品ですが、『セント・エルモス・ファイアー』についての感想を聞かせてください
「37年前の作品とは思えないくらい、現代人にもすごく刺さるものがあるなって思いました。こんなふうに性格とか好きなものが違っている7人が1つになって仲良くいられるというのに憧れますね」
――「ザ・シネマ新録版」のような、吹き替えを新録して過去の名作を蘇らせるというプロジェクトについて、どう思いますか?
「小さい頃から過去の名作をたくさん見てきました。すでに名作と言われている作品に関しては、当時の吹き替えキャストの方の印象が強いというか、イメージが固まっていることも多くて、それは、一視聴者としては楽しいことですけど、声優としては、特に私はまだまだキャリアも浅いので、そういった昔の名作に携わることはできないんだろうなっていう思いがありました。なので、今回のプロジェクトで携わることができて本当に嬉しいです」
――カービー役を新祐樹さん、ビリー役を武内駿輔さん、ケヴィン役を畠中祐さん、アレック役を石川界人さん、レズリー役を早見沙織さん、ウェンディ役を花澤香菜さん、そしてジュールズ役をファイルーズあいさんという、豪華な声優陣に名を連ねてメインキャストの1人に選ばれましたね
「はい。そうそうたる声優陣の皆さんの中に、私の名前を挙げてくださったことは本当に感謝しかないです。今回の新録キャストは、本国の俳優さんたちの当時の世代と同じくらいの声優を集めたとうかがいました。私はデビューが遅かったので、同世代の皆さんよりもずっと経験が浅いのですが、それでも私を信頼して"ジュールズ"という素晴らしい役を任せていただけたことは本当に光栄だなという気持ちでした。
――これまでに共演された方も多いのでは?
「そうですね。特に石川界人さんはデビュー作でご一緒させていただいていますし、本当にお世話になっています。でも、最近だとコロナ禍ということもあって、作品で共演させていただいたとしても、個々で収録することも多いですし、収録する時間が同じじゃなかったりするので、"共演している"という感覚がなかなか無くて。あとで完成した作品を観た時に、"共演できて光栄だな"と実感しますし、"次、また別の作品でご一緒できるように頑張ろう!"って思うきっかけにもなっています」
――作品への思い入れが強い方も多いと思いますが、名作で新録することへのプレッシャーは?
「むしろ、私はプレッシャーで燃えるタイプなんです(笑)。"よし、良いものをつくろう!"って逆に燃えますね。なので、今回も"良いものを作ろう!良いお芝居をするぞ"という気持ちで挑みました」
――声を演じた"ジュールズ"の印象は?
「本当に等身大の女の子だなという印象で、全員が全員ではないと思いますが、あんなふうに虚勢を張ったり、自分の本当の気持ちを隠して"強い自分"を演じたいという気持ちは誰もが持っているものだと思いますし、私にも経験があるので、とても演じやすかったです」
――吹き替え演出を担当された音響監督の依田孝利さんからはどんなアドバイスがありましたか?
「依田さんは『彼女はいつも虚勢を張っている子だから、"いい女を演じている子"を演じてほしい』とおっしゃっていて、それが結構難しかったです。わざと芝居がかった話し方をしたり、7人の中での彼女の存在が、いい意味で"浮いている"感じになることを意識してみました」
――収録現場の雰囲気は?
「1人での収録だったので"淡々と"という感じでしたけど、監督が直接見てくれているので安心感がありました。そこまで焦りとかは感じずに、監督と1対1でディスカッションを重ねて録ることができたかなって思います」
――ファイルーズさんはアニメ作品も多く声を担当されていますが、洋画の吹き替えとアニメではどんなところに違いを感じますか?
「技術的なことが一番大きいですね。アニメーションだと、絵がまだできていない段階でアフレコをすることも多くて、ある程度のアドリブだったり、尺にそこまでピッタリと合わせる必要がなかったり、自由度が結構高いんです。でも洋画の吹き替えとなると、本国の役者さんがその役を作ってらっしゃるので、その方のイメージと、自分のイメージをすり合わせることが大事かなと思います。翻訳の方がピッタリと口に合うように訳してくださっているので、その思いもちゃんと乗せつつ、技術的にもうまく表現できるようにするというのが大変なところですね」
――公開当時に見ていた方だけでなく、ファイルーズさんと同じ世代の方にも観てもらいたい作品だと思いますが、最後に読者の方にメッセージをお願いします
「はい。今の時代、SNSが発達していて、大事な友達との会話の時間が減ってきているのかなって思いますし、友達と疎遠にもなりやすい環境なのかなとも思うんです。そんな時代だからこそ、直接会って話すコミュニケーションの大切さを私はこの作品から学びました。皆さんも、そんな"友達の大切さ"をこの作品を観て感じていただけたら嬉しいです」
取材・文=田中隆信 撮影=中川容邦
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