――2021年に香港の日刊英字新聞サウスチャイナ・モーニング・ポストで「今、活躍しているアジアのアクションスター10人」に選出されましたが、そこに添えられた「Having just turned 30 earlier in June, Takeda's future looks very bright indeed.」という言葉について、以前ツイートされていました。30歳になった武田さんの未来は明るい、というニュアンスかと思いますが、30歳という年齢は節目となったのでしょうか?
そうですね。10代、20代は本当にがむしゃらに生きてきたので余裕がありませんでした。自分の生真面目さが悪い方向にいっていたことも多くて、面白みのない人間だっただろうなと思うんですが、30歳になってからは肩の力も抜けてきて、自分の意見を自分の言葉でちゃんと言えるようになったので、少し生きやすくなりました。
――海外からアクションを評価されることも多いと思います。今作にはアクションはありませんが、国内、海外でアクションの有無を含めた作品選びを意識しているところもあるのでしょうか?
いえ、国内でもアクションはやりたいんですが、なかなかご縁に恵まれなくて…。毎日のように体は鍛えていますし、今でもアクションチームに行って練習したりもしているので、常に準備はできています。ただ、今までは「なんでアクション作品ができないんだろう」と思ってしまうところもあったんですが、今は「ないんだったら自分で生み出そう」という気持ちになれました。前向きにいろいろと考えています。
2019年に韓国の映画祭で、各国のアクション業界に携わる方たちが集まる国際会議があったんですが、そこに日本代表で呼んでいただいたことがあったんです。その時に「日本はもったいないよ」「日本には空手などの伝統的な武道があるのに、なんで千葉真一さんとか倉田保昭さんとか、志穂美悦子さんのように今の時代もやらないんだ」って言われたんです。「ハリウッドはやっているよ」って。「確かに!」と思いました。
香港だったら、ジャッキー・チェンさんとか、ジェット・リーさん、ドニー・イェンさんといった方々がいますが、日本には今いない。そういった意味で、「武道を極めて自分の体で映画を表現できるのは梨奈だと思っているから頑張れ」と、その場の皆さんに背中を押されたことで、「自分のやるべきことってこういうことなんだな」と思わされました。
私がその場に呼んでもらったきっかけとなったのは「ハイキック・ガール!」という作品だったんですが、私はその当時16歳なんですよ。すごくうれしいんですけど、自分の“時”が止められている気がしたんです。うれしい反面、「このままじゃダメだな」「名前を挙げてもらっているのに、私は何にも残せていない」という気持ちになって。だから、ジャパニーズアクションを世界でもっと見てもらえたらいいなという気持ちがあります。
――武田さん自らが発信するアクション作品も見られる機会も遠くないかもしれないですね。
そうですね。本当に早く、皆さんにそれを形にして届けられる日が来ればいいなと思っています。
――武田さんは取材でジャッキー・チェンさんの名前をよく挙げられていますが、そうなればいよいよジャッキー・チェンさんに近付いているようにも思えます。
いえいえ、まだまだです。でも「本当にリスペクトするからには超えなきゃいけない」と思っているんです。10代の頃からアクションを教わっている監督に「師匠に追いつけるように頑張りたいです」と言ったことがあるんですが、「追いつくんじゃなくて、追い起こさなきゃ」って言われたんです。だから「追いつけるように頑張ります」という生半可な気持ちではなく、尊敬しているからこそ、追い抜いてみせますと言えるくらいにならなきゃいけないなと思っています。
ジャッキー・チェンさんもブルース・リーさんにすごく憧れていましたが、今では唯一無ニの存在ですよね。ジャッキー・チェンさんはブルース・リーさんではないし、ブルース・リーさんもジャッキー・チェンさんにはなれない。私も、誰かになりたいというより、自分にしかできないものを作って、唯一無二を目指したいです。
◆取材・文=山田健史、ヘアメーク=堀奈津子、スタイリスト=RYUSEI MORI
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