――LiSAと言えば圧倒的なライブ、という点に異論がある人は少ないと思いますが、どうしてもライブに制限が生じてしまうのがここ数年じゃないですか。特に前作『LEO-NiNE』のときは、「ライブが日常ではない状況も踏まえたアルバム作りをした」と話していましたが、『LANDER』についてはどうでしたか。
LiSA：わたし自身は、去年(2021年)にもライブやツアーをやってきたこともあって、今の世界でやれる新しい遊び方は、わたしなりにみんなと一緒に発見してきたと思います。そしてわたしの中で、今の世界でやれるライブはもうやり尽くしてしまったような感覚もありました。声が出せない状況に合わせてライブを作っていくことの限界もあるし、今やれることは全部やった気持ちがあります。だから『LANDER』では、このご時世にもかかわらずみなさんに歌ってもらう箇所をたくさん作っています。やっぱり、わたしもみんなを目の前にして、みんなと一緒に作るライブがすごく好きだから、そこは世界がどうであれ、わたしが提示していく音楽の楽しみ方は変わらなくてもいいんじゃないかなって思ったんです。
で、それとは別に、去年1年ライブをしながらテレビやCDや作品を通して楽曲を聴いてもらう機会がたくさんあって、画面や作品を通して音楽を聴いてもらうことの勉強もさせてもらいました。今回のアルバムでも、柱になっている楽曲たちが、そこの部分を担ってくれているんじゃないかな、と思います。
――「今の世界でやれるライブはやり尽くした」って、パワーワードですね(笑)。
LiSA：(笑)だって、もうやれることなくないですか？
――確かに。
LiSA：わたしのライブの楽しみって、お客さんと会うことだけど、あの最高潮を知っている身としては、もう一度みんなと一緒に、あの最高潮に向かいたいなって思いますね。
――ライブができなかった時期に、自身の歌い方や表現の仕方と向き合った時間も長くあったと思いますが、そのことは今回のアルバム制作にどんな影響を与えたと思いますか。
LiSA：自分が自由に背負える楽曲がたくさんあったから表現できたものもたくさんありつつ、どれだけ歌の練習をしても、「ライブ力」ってライブでしかつかないんですね。どれだけカラオケに行っても、何度リハをしても、本番のライブを１回しないと、自分の体力や経験、本番力みたいなものが完成しないんです。緊張感も含めて、他のものでは補えないものがやっぱりあるんですね。それはレコーディングも同じで、今までいろんな楽曲を歌ってきたけれど、「自由度が増しました、自由に歌ってください」となったときに、自分の歌の表現で「あれ？ これもできるようになってる」って、実感することがたくさんありました。
――今回のアルバムのタイトルは『LANDER』で、「新しい惑星にたどり着いた」的なコンセプトは面白いな、と思ったんですけども。
LiSA：「やり尽くした」と真逆なことを言ってしまいますが(笑)、『LANDER』というタイトルは、今年の4月にソロデビュー10周年を終えたときに、この10年でわたしが想像していなかった未来にみんなが連れてきてくれて、幸せや喜びや悲しみを超えて一生懸命走っていたら、誰もたどり着いたことのない惑星にたどり着いたような気持ちになりました。誰かが作ってきたものを目標にするのではなく、新しい世界で始まる新しい物語のような感覚があって。ここからの10年は、新しい世界をみんなで作っていきたいなって思います。
その始まりとしての11周年をどうやって歩いていこうか考えていて、以前とは違う形かもしれないけどライブではみんなの情熱を感じたし、みんなに会えることの喜びも感じました。またここから、わたしたちはスタートしていくんだなって思います。その上で、いつかみんなと一緒にまた発散したり歌ったり喜んだり、声を掛け合ったり触れ合ったりする機会があるといいな、という想いも込めて、この『LANDER』に全部詰め込みました。だから、すごく希望を込めて作ったアルバムです。こんな世界でもやれるライブがあるなって思わせてくれたのは、みんなが見せてくれた景色だったから、希望を持っていたいなって思いました。
――今までのライブや楽曲も踏まえて、受け取る人を新しい世界に連れていける１枚になっている。
LiSA：はい。こんな世界だからこそ、落ち着いた楽曲ばっかりを歌うことは、わたしの気持ちとは違うなって思って。みんなが見せてくれた希望を、わたし自身が持たせてもらった希望としてちゃんと表現したいと思ったからこそ、結果的に激しいアルバムになりました。
インタビュー第2弾は11月22日公開予定
取材・文＝清水大輔 写真＝中野敬久
スタイリング＝久芳俊夫 ヘアメイク＝氏家恵子
この記事の関連情報はこちら（WEBサイト ザテレビジョン）