最近彼を知った人も多く、新人のようだが、2012年にデビューして、キャリアは10年になる。元々は俳優志望ではなく大学では演出を専攻していた。それも「放送関連の仕事をしたいなぁ」と漠然と考えていたレベルで、大学入試のときに、実技試験が無く筆記試験の点数のみでちょうど入れる演劇映画科が目に入って…というのがきっかけ。
そして、授業でセリフを言ってみたところ、自分にも演技ができそうな気がしたんだとか。それまでは「TVや映画に出るのは自分とは違う世界の人」と思っていたが、軍隊に行ってもずっと演技のことが頭から離れず、未練を残さないためにも、諦めがつくまでやってみよう、と挑戦を決めたんだそう。そして、先輩から提案された「12番目の補助司祭」というインディーズの短編映画のオーディションを受けてみたところ、見事合格。この映画はいくつも賞を獲り、彼も映画祭で「短編の顔賞」を受賞した。
その後も数々の映画やドラマに出演してキャリアを重ね、「アルハンブラ宮殿の思い出」では主人公を想いすぎてウザさ全開な男、「恋愛体質」では自分のことしか考えない面白くない芸人…など、女性に嫌われる役をいくつもこなしていたが、一気に彼を有名にしたのは大ヒットドラマ「夫婦の世界」。この作品でイ・ハクジュは、バーテンダーのカノジョに容赦なく暴力をふるうDV男・インギュをすさまじいリアリティで演じ、登場しただけで恐怖を感じさせるほどだった。
彼はこれまで様々な役を演じてきたが、そのほとんどが自分とはかけ離れたキャラクターなんだそう。それでも上手く演じるために自分との共通点を探ったり、理解しようと努力するのだが、その中でどうしても大キライで理解もできないし感情移入もできず苦労したのが、このインギュだったそう。
そこで「動物だと思おう」と考えて、ハイエナを考えながら演技したら上手くいったそうだ。この方法は今でも使っていて、「マイネーム」のヤクザのテジュはオオカミ、「こうなった以上、青瓦台に行く」(日本未放送。タイトルは韓国語直訳)の秘書・スジンはキツネを思って演じたとのことだ。
「夫婦の世界」のオンエア当時は、SNSに悪口が溢れていたが、“パク・インギュ”というクズは非難されるのが正しい反応なので、悪口を見るたびに感謝していたそう。「女主人公イジメ専門俳優」などと不本意な肩書きを付けられたりもしたが、最近では、ネ「マイネーム」と「ー青瓦台に行く」で披露したスリーピーススーツ姿が「セクシー!」と人気を集め、「スリーピースフィット」と言われたりするようになったのだ。
「スリーピース」という言葉も知らなかった彼はこれほど話題になるとは思わず、「セクシー」という誉め言葉も初めて言われて少し戸惑いもあるようだが、「以前は僕にも魅力があるのに、どうして人々が分かってくれないのか…と思ってました。でも今は、みなさんが僕に気づいてくれて嬉しいし、自分にこんな魅力があるのか!と思ったりもします。みなさんの期待を満たせなかったら…と不安もありますが、今は満喫しようと思います(笑)。セクシーだという言葉も信じてみます」と、この状況を楽しみ、「ある修飾語で人々に記憶されるということ自体が非常に難しいことなので、これからもいろんな修飾語が付くような俳優になるように頑張っていきたい」と意欲を見せた。
演じる際、少しずつ余裕も出てきたが、まだ本番では緊張するという。だが、「自分は職業のために熱と誠意を尽くしている人」と言う彼は、「後悔なくがんばっているので、ヘンに萎縮する必要はないんじゃないか、と勇気を出して現場に行ってます」と語り、様々な役柄に挑戦中だ。ちなみに今一番やりたいのは「ロマンス」「メロドラマ」だそうだ。今年2022年の11月に結婚したばかりの彼は、きっとまた今までとは違う愛に生きる男の姿を見せてくれそうだ。
さて、今回の「刑事ロク」ではイ・ハクジュ演じるギョンチャンは「友」なのだろうか…。今までの強い悪役イメージから疑いを持っている視聴者も多いようだ。真犯人を知るまで、チン・グは「自分以外のすべての人物」を疑い、キョン・スジンは意外な展開としてテクロクを疑った。イ・ハクジュは「常にテクロクのそばに居て、疑いを避けることができるソンア」と推理し、イ・ソンミンは「署長→ジナン→チョン社長…と揺れた」そうだ。
監督は、「毎回、登場人物たちの話に集中すれば、ヒントが隠れている」と言う。俳優たちの演技に惑わされずにセリフに耳を傾けて、真犯人を探し出してほしい。
◆文=鳥居美保/構成=ザテレビジョンドラマ部
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