そして、ファイナルとなるシーズン11、ウォーカーが出現する以前の“旧世界”時代から政治家一家のパメラ知事(ライラ・ロビンズ)が統治する「コモンウェルス」という街が登場する。5万人が暮らす、終末世界以降では最大規模の都市だ。そこは終末世界であることを忘れさせるほど、生活が安定しており、全てが豊かだった。しかし、パメラ政権には裏があった。バカ息子のセバスチャン(テオ・ラップ・オルソン)が気に入らない人間を殺しても事件化しなかったり、異議を唱えた人間は街から消えたり…。聾唖者のジャーナリスト・コニー(ローレン・リドロフ)が問題を露呈させたことにより、パメラや息子に疑惑の目が向けられたが、最終的には権力に従う者によって、事件は封印された。その後、街には平穏が戻ったように見えたが、祭りの最中にセバスチャンがウォーカーに殺されたことで、主人公グループのユージーン(ジョシュ・マクダーミット)が罪を着せられ、さらにコモンウェルスに移住していたアレキサンドリアの人々は全員が拘束される事態に陥った。
最終的に主人公グループが戦う相手は、凶暴な強奪グループではなく、表向きは立派な顔をしている権力者たちだった。現実でも、まともに機能していない政府が世界中に数多くある中で、この最終決戦は実に興味深い展開といえよう。第20話で弁護士のユミコ(エレノア・マツウラ)の兄が「パメラの不正が暴かれたが、いまだに地位を維持している。正義が果たされることはない」と妹を諭したかと思うと、第22話ではパメラに罪を着せられたユージーンが裁判で「かつてバッドを人に振りかざす人がいても見て見ぬふりをした。自分に何もできないと諦めて行動を起こさないことは、犯罪者たちと同じだ」と傍聴する者たちに訴えた。
一方では息子を救出に来たマギーが、怒りを爆発させそうになる自分に気付いて、「正しくありたい」とキャロルにこぼす。やらなければ殺される終末世界でも正しさを胸に生き抜いてきた人々が、旧世界的な権力者たちにどう立ち向かうのか。彼らが最後にどんな景色を目にするのかにも注目したい。
2023年にはダリルを主人公としたスピンオフと、ニーガン&マギー、リック&ミショーンのそれぞれが主人公のスピンオフが放送される予定のため、この5人は恐らく完結後も活躍するようだが、ファイナル・シーズン最終話のタイトルは「Rest in Paece(安らかに眠れ)」。第23話ではジュディスが撃たれたり、リディアがウォーカーにかまれて腕を切り落としたりとショッキングな出来事もあった。12年を締めくくるラストということもあり、最終話は覚悟して臨んだほうがよさそうだ。
◆文=及川静
この記事の関連情報はこちら(WEBサイト ザテレビジョン)