森田成一が追い続ける、「BLEACH」黒崎一護の理想の声「僕はずっと、一護に困らされています(笑)」

「“アイツ”と僕がオーディションで戦ったら、真っ先に落とされるのは僕」

「BLEACH 千年血戦篇」ビジュアル (C)久保帯人/集英社・テレビ東京・dentsu・ぴえろ


——はい、書きます!(笑) では、森田さんにとって、黒崎一護というキャラクターはどう映りますか?

本当に難しいキャラクターで…。行けども行けどもフックとなるものが見えづらい。他のキャラクターはどこかしらあるんですよ、自分の手をかける場所が。でも一護は手をかける場所がなく、ずっと悩み続けているこの10数年です。

一護の思考は普通の主人公とちょっと違っていて、先の先の先を読んで話すことが多い。その分、一護の言動を周りは理解できないままということが多く、最後の最後になって意味がわかる。とても思慮深い人なんですけど、普通の考え方だと彼の脳みその中をたどることができないんですよ。それゆえ、一護の「俺はこうする」という言動にどうして行き着いたのか、はじめはわかりません。その意図が明かされるのは、もっと先だから。結果、「その答えが合っていないと、ここの演技ができない」という状況に陥るんですよね。僕はずっと、一護に困らされています(笑)。みなさんにとっては慣れ親しんだ声になってもらえていたらうれしいのですが、僕が理想とする黒崎一護の声にはまだ遠いんです。

——それは驚きです。森田さんの中では、どんなイメージなのでしょう?

うまく表現できないんですよね、○○みたいな声というのはなくて…。ただ、僕が理想とする黒崎一護の声を出せる声優さんは1人もいないと思います、自分も含めて。今でも「BLEACH」を読む時は、僕だけの黒崎一護の声で読んでいます。もしその声と僕がオーディションで戦ったら、真っ先に落とされるのは僕です。それくらい、“アイツ”はすごいんですから。ある意味、僕の内なる虚(ホロウ)ですよ(笑)。

一護の声自体、その声に近づけようと専用に開発して作ったものなので、特殊な出し方をしています。空気の出し入れや喉の形を一護用に開発したんですけど、「死神代行篇」の第1話の時点ではまだその音ができあがっていないから、今の声と全然違うんですよ。「死神代行篇」の第1話と「死神代行消失篇」の第366話を見比べていただければ、分かりやすいと思います。卍解するあたりでやっと“ここがひとつの到着点”と思えるところにたどり着き、楽に声を出せるようになりました。頭の中の一護とはちょっと違うんですけど、今の声で浸透しているので途中で変えるわけにもいかないし、そのまま続けています。

——人気キャラクターの多い「BLEACH」ですが、森田さんが「千年血戦篇」で注目しているキャラは?

「千年血戦篇」って、オールスターじゃないですか。総決戦なので本当に難しいんですけど、一護以外で好きなキャラクターは昔から山本元柳斎重國です。あまりにもかっこいいですよね、強いし。最初は杖をついていたから、みんな「総隊長だけど、もう一線を退いているんだろうな」と思ったはず。ところが、脱いだらすごい(笑)。しかも、炎熱系最強にして最古の斬魄刀“流刃若火”を持っている。「千年血戦篇」での山本元柳斎重國とユーハバッハの戦いはものすごい迫力で、これほどすごい死神の戦闘がかつてあったか、と思ったくらいでした。

関連人物