「ラブライブ!シリーズ」初のミュージカル作品となる「スクールアイドルミュージカル」が、12月10日から東京・新国立劇場の中劇場で上演されている。ラブライブ!シリーズは「みんなで叶える物語」をキーワードにオールメディア展開するスクールアイドルプロジェクト。アニメーション PV(DVD&BD)付きの音楽CDリリースの他、雑誌・小説などの書籍、TV アニメ、スマートフォン向けゲーム、コンシューマーゲーム、トレーディングカードゲーム、各メンバーを演じるキャストによるライブイベントやラジオ、生配信など、さまざまなメディアを巻き込んだ展開で人気を集めてきた。その新たな一歩が、完全書き下ろしによる新作「スクールアイドルミュージカル」だ。
上映時間はたっぷり約2時間半(途中休憩あり)、歌とダンスと発声に秀でた出演者が集まっていて、衣装の一つ一つがキャッチーなので、時間の経過が一瞬に思えてしまう。10人の少女たちの歌やダンスへの思い、友情、勉強とエンターテインメントの両立への葛藤などが反映されたストーリー展開に引き込まれないファンはいないのではと思えるし、普段別々のグループで活動しているアイドルや、俳優、声優などが集結してチームを組んでいる姿はなかなか他では見られないはず。「とても貴重な場所に居合わせた」と、観客の誰もが実感するに違いない。
勢いのあるキャストたちの、心強い助っ人というべき存在が、兵庫の名門進学校・椿咲花女子高校の理事長を演じる蒼乃夕妃、芸能コース選抜アイドル部を擁する大阪の有名高校・滝桜女学院の理事長を演じる岡村さやかという、豊富な活動歴を誇る2人。スーツを着た両者がバチバチに火花を散らし合う一方で、その娘たちである椿ルリカ(堀内まり菜)、滝沢アンズ(関根優那)が互いの実力を認め合い、交流を深めていくところにも心が温まる。
ゲネプロ(通し稽古)の後には会見が行われたが、出演者自身がとにかくこの顔合わせとミュージカルというフォーマットに新鮮味を感じているのが伝わり、2組で刺激を与え合っているようでもあった。ルリカの幼なじみの内気な少女・皇ユズハを演じるAKB48・浅井七海は「椿の5人はそれほど舞台をやっている感じではないので、滝桜の皆さんの稽古を最初に見たときにすご過ぎて、本当に恐れおののいて震え上がりました。私たちももっと頑張らなくちゃねと話し合いました」と語ったが、彼女の本編における抑揚に富む歌声と、しなやかなダンスには、萎縮を乗り越えた輝きがあった。
一方、滝桜女学院の来栖トアを演じる星守紗凪は、声優としても精力的に活動しており、どこまでも真っすぐ伸びていきそうな声の魅力は、このミュージカルでも変わることがない。彼女はまた、「来栖トアちゃんは、この5人の中だと唯一の1年生。先輩に憧れて入学した1年生であるにもかかわらず、先輩たちにそんなに遠慮することなしに思ったことを発言するんですが、先輩たちのちょっとした気持ちとかにすごい反応して、分かりやすくバタバタしたりもします。2校がどう関わってくるかというところと、5人が仲間でもあり、ライバルっていうところをどう表現していくのか、そこを見ていただければうれしいです」と意気込みを語った。
作曲・編曲・音楽監督・歌唱指導の小島良太氏は英国ギルドホール音楽院を経て(つまり、ビートルズのプロデューサーであるジョージ・マーティンの後輩ということになる)、劇団四季に在籍したこともある才人。彼との出会いは、全キャストに音楽的に触発するのではないか。「スクールアイドルミュージカル」の東京公演は15日(木)まで行われ、2023年の1月25日(水)~29日(日)には、大阪・梅田芸術劇場 メインホールでも開催予定だ。