『アークナイツ』の絶望に、寄り添いたかった。ReoNa『Alive』インタビュー

2022/12/14 18:01 配信

音楽 アニメ インタビュー

ReoNa※提供写真

『Alive』は、一緒に未来を作ってくれる、一緒に未来へ踏み出してくれる1枚


[――カップリングの“Numb”の作詞や編曲には「Dreamlab」(ロサンゼルスを拠点にする音楽制作チーム。ジャスティン・ビーバーやケイティ・ペリーなどのプロデュース実績がある)がクレジットされてますが、この布陣はどのように実現したんでしょう。

ReoNa:このご縁をくださったのは、ruiさん(“Alive”“Numb”の作曲担当)です。アニソンはいろんな国に届くものですけど、今回“Alive”は中国語バージョンでも歌わせていただきました。アニメを受け取ってくださる国の方々の言葉で、お歌をお届けしています。その中で、“Numb”は、もしかしたらどこかの国でアニメを見ているかもしれない方に、絶望系アニソンシンガー・ReoNaはこういうことを歌ってるんだよって、届いてくれるお歌になればいいな、と思っていて。今回は(Dreamlabの)リア・ヘイウッドさんの力を借りて、その国の方々に届く言葉で届ける歌詞にしていただきました。

――「Numb」は「麻痺」という意味なんですよね。歌詞を読んでいて、ReoNaというアーティストの何が伝わると、こういう歌詞が出てくるのかな、と気になりまして。

ReoNa:「絶望系」という言葉の持つ意味を汲み取っていただきました。きっと、リアさんも、「こういうことなんじゃないか」って噛み砕いていただいたんだろうなって想像しています。

――「麻痺」っていう言葉が、あまりにも「ReoNa的」なワードでしっくりきますね。なんで今までこのワードが出てこなかったんだろうって思うし、まさに英語詞だから表現できていることがこの曲にはあるな、と思うんですけども。

ReoNa:まさに、同じ気持ちでした、受け取ったときに。「Numb」ってすごい言葉だなあと思って。「そう来たか」って思う気持ちと「それだ!」って思う気持ちがどっちもありました。すごくしっくりくる言葉でもありましたし、このタイトルで楽曲が届いたときに、わたし自身も中身がとても気になりました。洋楽的な楽曲だと、「絶望系」ってこういう形になるんだなって感じられる曲をいただけたと思います。

――絶望系アニソンシンガーを掲げつつ、「ReoNaの音楽」の素養はいわゆるアニソン的なものに限定はされていなくて、幅広いポップスに向かっているじゃないですか。それってアーティスト・ReoNaのある種のひとつの本質というか、音楽的なレンジの広さは常に持っているし、ある意味“Alive”以上にこの“Numb”を広く聴かれてほしいですね。

ReoNa:今、音楽にもアニメにも国境が要らなくなってきていますし、YouTubeを開けばわたしたちも洋楽に触れられるように、海外の方々にも、簡単にアニソンをはじめ日本の音楽に触れていただける窓口はたくさんあります。なので、アニソンファンの方はもちろん、“Numb”をきっかけにReoNaと出会ってくださる方がたくさんいらっしゃったらいいな、と思います。きっと世界でも「絶望系」を求めてるというか――日本だけじゃなく、海外、全世界にそういう方がいると思います。いじめとか不幸とか、苦しい日常の中で閉塞感を感じている人がいるのは日本だけじゃないはずですし、海外の方々に届いてほしいです。

――“Numb”はとにかくMVが秀逸で。水中の芝居が上手すぎて驚きました。

ReoNa:初めての水中撮影を今回させていただいて、わたしとしては念願が叶った撮影でした。水の中が大好きなんです。奄美大島生まれということもあって、水の中はもともと身近だし。痛みとか生きていることを感じざるを得ない場所なんです。もちろん息なんてできないし、数メートル先も見えないし、身体の自由も利かない。でも、命が生まれて、また帰っていく場所のようなイメージが、水中にはあります。苦しいけど、居心地はいいんです。すごくこう、慣れ親しんだ場所で撮影するような感覚でした。気持ちよかったです。


――同じくカップリングの“一番星”は、まさにライブを重ねてきた時間が紡いでくれた楽曲、という印象です。ライブでのバンマスである荒幡亮平さんもReoNaのお歌を熟知していて、その関係値を何年も積み重ねてきたからこその楽曲になってますね。

ReoNa:ありがとうございます。レコーディングは、ピアノとボーカル同時にスタジオに入って、お互いの呼吸だけで演奏させてもらって、完成しました。まさにこの歌を録ることができたのは、今まで重ねてきた時間があったからなんだって思える時間でした。全部が全部相手に合わせるわけではなく、でも全部が全部自分が引っ張っていくわけでもなくて、わたしが言葉を置いていきたいところに言葉を置いていって、荒幡さんが置きたいところに音色を置いていって、歩幅を合わせながら楽曲を紡いでいく。ライブで一緒に音楽を紡いできたからこそのテイクが録れたと思います。自分の表したいものをイメージするとともに、お互いに予想を立てながら、一瞬のせめぎ合いの中でレコーディングができました。

―― “Simoom”は非常にカッコいい楽曲になっていますが、このPanさんというクリエイターの方は初参加ですよね。

ReoNa:はい。今回初めてご一緒した、LIVE LAB.(ReoNaの所属事務所)のニューフェイスです。初めて年下のクリエイターさんと組ませていただいて。初めて聴いたときから本当にカッコいい楽曲だと思っていて、たとえば『アークナイツ』の戦闘シーンとかで流れたら、すごくハマるだろうな、と思いました。これからも、ご一緒できる未来があるといいな、と思います。

――7枚目のシングル“Alive”は、新たな一面をガッチリ打ち出せた1枚だと思います。このシングルが持つ意味を、改めて言葉にしてみてもらえますか。

ReoNa:絶望系アニソンシンガーとして4年間お歌をお届けしてきて、武道館ワンマンという大きな未来だったり、5周年という大きな未来だったりを目の前にしてお届けさせていただく1枚で、各楽曲が今までにない挑戦だと思ってますし、一緒に未来を作ってくれる、一緒に未来へ踏み出してくれる1枚だと感じてます。まだ“Alive”以外の楽曲はライブでも披露してないですが、これから先に歩んでいく一歩一歩の中で、枝葉の先が伸びていく前の種、芽吹きのようなものが詰まった1枚になりました。この1枚から、この先の未来をすごく楽しみにしていただきたいですし。わたし自身もこの『Alive』を持って、その枝葉が伸びていく先を作れたらいいな、と思っています。

取材・文=清水大輔

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