“サイコパス殺人鬼”役を怪演 幅広い演技で魅了する韓国俳優コ・ギョンピョを解説<コネクト>

2022/12/21 06:15 配信

ドラマ レビュー

普段は寡黙な会社員だが実は殺人鬼のジンソプ(コ・ギョンピョ)(C)2022 Disney and its related entities

映画「クローズZERO」「殺し屋1」などの監督・三池崇史がメガホンを取り、「愛の不時着」「トッケビ」などで知られるスタジオドラゴンが制作、そして韓国では“国民的年下彼氏”ともいわれるチョン・へインが主演を務める韓国ドラマ「コネクト」。同作でチョン・へイン演じる不死身の男と対峙するサイコパスの殺人鬼・ジンソプ役で怪演を見せているのがコ・ギョンピョだ。主役、脇役など役の大きさを問わず、またどんなジャンルにも挑戦し、多作な俳優としても知られる彼の魅力に迫ってみたい。

不死身の男の眼を移植された殺人鬼

「コネクト」は同名のウェブトゥーンが原作。不死身の男・ドンスが、臓器密売組織に奪われた自分の右眼が連続殺人鬼に移植されたことを知り、目玉を取り返すために犯人を追うクライムファンタジースリラー。ディズニープラス「スター」のオリジナル作品で、全6話一挙独占配信中だ。(以下、ネタバレを含みます)

「コネクト」と呼ばれる不死身の身体を持つドンス(チョン・ヘイン)は、帰宅途中に臓器売買集団に拉致される。そして、臓器を取り出すために体を切り裂かれ、両眼もくりぬかれたが、傷口は見る見る塞がり、起き上がった彼は左眼を体に戻した。その時、異変に気付いた闇医者が仲間を呼んだために、右眼を戻す前に彼は逃げるしかなかった。

ドンスは、この特殊な体のせいで幼い頃から「化け物」と呼ばれ、辛い人生を送ってきたために、世間と交わらずに生きている。動画サイトに自作曲をアップして、寄せられたコメントを見るのが唯一の楽しみだ。右眼を失くして以来、その曲がきっかけとなり、ドンスの無いはずの右眼に激痛が走り、どこかにあるその眼が見ている光景を共有するようになる。ドンスの眼を移植されたのは、韓国中を震撼させている、死体を彫刻のように加工して大衆の前に展示する“死体アート”の連続殺人鬼だった。ドンスは眼を取り返すために犯人を追っていく。

「コネクト」より(C)2022 Disney and its related entities


その殺人鬼の正体が、コ・ギョンピョ演じる会社員のジンソプ。会社ではごく普通の男として生活しているが、同僚たちからはどこか謎めいていてつかみどころのない人物だと思われている。ジンソプがドンスの曲を聴くと、ジンソプの視覚がドンスに共有されるのだった。

「ジンソプに対して好きなところが1つも無い」


コ・ギョンピョはジンソプについて、「罪の意識なしに人を傷つけ、他人の身体を通じて自分の人生の存在と目的を世の中に示す人物」と説明し、「好きなポイントが1つも無い」と評した。また、「ジンソプは、最小限のエネルギーで人生を生きていく人間で、本人がしなければならないこと(殺人と死体アート)にこれまで蓄積したエネルギーを全て注ぎ込まなければならないんです。話が進んでいくと、彼が他のところにエネルギーを注ぐことができない理由がわかります」と語った。

そして、「他の作品では、ソシオパスが日常では普通の人と区別できない存在に描かれることもあるけど、ジンソプは異質感が現れるように、堂々と変な人だということを見せようと思いました。それと、他人に対する態度は、不気味な感じが誇張されているよりむしろ落ち着いた感じを出しました。三池監督も、表現を最大限抑えることを望み、その代わりに目つきと雰囲気を通じてジンソプの執拗さを表わしてほしい、と言われました」とジンソプの役作りについて語った。

何人ものジンソプ役の候補の中から、三池監督は悩んだ末、コ・ギョンピョの純粋な姿が面白そうだと思って、チョン・ヘインに相談したんだとか。彼はコ・ギョンピョとNetflixの「D.P.」で共演しており、共演シーンは長くなかったが、ヘインは彼から良いエネルギーをもらい、もっと長く一緒に演じてみたい、と思っていたことを監督に告げ、コ・ギョンピョがキャスティングされた。実際、対立関係であるにもかかわらず、思った以上に和気あいあいと楽しく撮影したそうだ。

コ・ギョンピョにとって、“サイコパスの連続殺人鬼”は初めてのキャラクターだ。「これまでやってこなかった雰囲気の人物を演じられること自体、やりがいがありました。でも攻撃的なアクションの時は、心が弱くなる瞬間が多かったです。例えば、ビルの上から人を投げつけるシーンでは、安全装置はあるにしても、実際に人が手すりの下に落ちる光景を見なければならない。心理的にキツかったです」と明らかにした。


“どれも違う人間が演じてるみたい”と言われるように


「作品ごとに違う姿を見せたい」と言う彼は、主演、助演などの役の大きさやジャンルを問わず、常に今までにやったことのない役や挑戦ができる作品を選ぶ。届いた脚本を、主演にこだわらずに読んだら、面白い作品がたくさんあり、楽しく撮影できることの方が重要だからなんだそう。「特別出演、端役、脇役を選ばずに僕を書いてくれる方々が居るなら、状況的にスケジュールさえ重ならなければぎっしり埋めて演りたいんです。そのキャラクターを全部違うように演じて、“どれも違う人間が演じてるみたい”と褒められるのが一番うれしいし、それが原動力です」と語る。

彼の知名度と評価を一気に上げるきっかけとなった「恋のスケッチ~応答せよ1988~」での、母子家庭で母親を支え、年の離れた小さな妹の面倒をよく看る優しい生徒会長という“理想の息子”から「コネクト」のサイコパスまで、彼は本当に常に違う顔を見せ続けている。

「特に挑戦したい役割は決めてないんですが、いつどんなキャラクターが来るかわからないので、常に準備はしてます。映画を観て演技をまねてみたり、鏡を見て話し方、呼吸、表情、ジェスチャーなどを練習します。そのまままねるんじゃなくて、そのキャラクターの雰囲気を身につける作業です」と自分の武器を増やしている。それだけではなく、普段から多くのことを見て感じて立体的な感覚を養っているんだそう。「あるキャラクターに会った時、分析して研究するのは基本」と語っている。

ロールモデルはヒース・レジャー(※映画「ダークナイト」ジョーカー役など)。彼を見ながら演技を長く続ける為にはどんなスキルを身につけなければならないのかを学び、“コ・ギョンピョ”という人物を消して、違う姿を見せていきたいと考えるようになった、とのこと。「彼から受けた衝撃、感動を、観客にも自分の演技から感じてほしい」そうだ。