2023年3月4日(土)~4月12日(水)に東京・IHIステージアラウンド東京で上演される、木下グループpresents『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』。企画・演出・主演の尾上菊之助が、コロナ禍のステイホーム中に改めてプレイした『ファイナルファンタジーX』に感銘を受け、スクウェア・エニックスに直接ビデオレターを送ったことから始まったという本作は、情報解禁時からSNSで大きな話題となった。今回、ティーダ役・尾上菊之助、アーロン役・中村獅童、シーモア役・尾上松也にインタビューを行い、本作の目指すところや、新作歌舞伎が歌舞伎界にもたらす影響について聞いた。新作歌舞伎とはいわば「過去への敬意、未来への夢」だという。
――木下グループpresents『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』(以下FFX)の情報が解禁され、SNSは様々な反響で盛り上がりました。菊之助さんがSNSの「公演時間(休憩を含む前編・後編通して)9時間は腰が死ぬ」という声から、客席に高弾性クッションを設置する提案をされたというお話もありましたが、活発な反響を皆さんはどのように感じていますか。
尾上菊之助 非常にご期待の声を多くいただいております。原作ファンの方にも納得いただけるよう、通し狂言(名場面だけを切り出すのではなく、全編を通す上演の形)で『FFX』の物語を最初から最後まで描いておりますので、そのご期待にお応えできるのではないかと思います。またIHIステージアラウンド東京で素敵な1日を過ごしていただきたいというのが、スタッフも含めた私たち全員の願いです。ですから、クッションのこともそうですが、SNSを通じて「こうだったらいいのにな」というお客様の声を、なるべく吸い上げて形にしていけたらと思っております。
中村獅童 キャスト解禁時に、SNSで「獅童はアーロンじゃないか」と予想されているのを見て「当たってる、すごいな」と思っていました。アーロン派とワッカ派に分かれていたんですけど、アーロンの方が多かったのでホッとしました(笑)。(8~9月に上演した)『超歌舞伎2022』でも、口上でファンの方と会話するときに「アーロンですか?」と聞かれたりして、でも「当たり!」とも言えないから「まだ言えないんだよ」って。
僕自身はほとんどゲームをやったことがないんですが、「ファイナルファンタジー」というタイトルは知ってます。それだけ人気の作品ですから、原作ファン・歌舞伎ファン、世代も色々な方がいらっしゃると思いますので、(360°回転舞台の)劇場を生かして、お客様も一緒に旅に出ていただけるような舞台にできればと思います。
尾上松也 情報解禁時に、周りの友人たちからたくさん連絡が来まして。『FFX』が発売されたのは2001年ですので、もう21年前になりますが、今回『FFX』の歌舞伎化だということを喜んでいる方がとても多かったんです。それだけ今なお愛されている作品だということも実感できましたし、自分の中での期待値も非常に上がりました。
――ご自身の役については、現時点ではどのように演じてみたいと思っていますか?
菊之助 ティーダは沖縄の言葉で「太陽」を意味していて、先日(告知用音声のアフレコで)声優の森田成一さんとお会いする機会があったのですが、澄み切った青空にある太陽のような、晴れ渡る声だったんです。ティーダのはつらつとした明るさを大事にしながら、歌舞伎ならではの、自分なりのティーダを作り上げていきたいです。
獅童 僕はキャラクター的にそんなに喋らない、渋めの役なので、内に秘めた魂を感じていただけるように演じたいと思っています。
松也 ゲームのムービーを見て、シーモアを演じている諏訪部(順一)さんにも連絡を取らせていただきました。もちろん真似になってはいけないのですが、声優さんたちの(演技の)質感があってこの作品が名作と呼ばれているわけですから、それを無視することになってはいけない。歌舞伎は古典を演じるとき必ず先輩方の演技を拝見して学びますので、少しそれに近いかもしれません。キャラクターの先輩である声優さんの演技を軸にして考えていきたいと思います。また今回、シーモアと父・ジスカルの関係をはじめ、ゲームでは描かれていなかった部分が色々と出てきますので、ゲームをプレイしている方も納得できるような役作りを心掛けていきたいです。
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