『新作歌舞伎 ファイナルファンタジーX』は「過去への敬意、未来への夢」100年続く古典を目指す

歌舞伎ならではの面白さとは?「古典の力で新作の舞台を作る」

尾上菊之助(中央)、中村獅童(左)、尾上松也(右)撮影=須田卓馬


――今、漫画やゲームを題材とした舞台作品では「2.5次元舞台」もあります。これは再現度を高めて原作に近づけるという方向性ですが、歌舞伎で漫画やアニメ、ゲームを題材にする場合の、それとは異なる歌舞伎ならではの面白さは、どんなところにあると感じますか?

菊之助 歌舞伎役者は幼い頃から修行をしているので、古典歌舞伎の演技体というものが身体に沁みついています。新作歌舞伎でも、歌舞伎役者から出てくる表現は古典の蓄積があってこそ。古典の演技体と、役の心情から導き出される答えが合わさることで、より奥が深いものになると思います。古典の力で新作の舞台を作るということを目指しています。

獅童 たとえば映像は寄れるけど、歌舞伎などの舞台は基本的に引きの絵ですよね。その中で「この人を見てくれ!」という方法、映像でいうところのクローズアップとして編み出されたのが「見得」。そういった歌舞伎ならではの表現方法と、最新技術をうまく融合させることが、歌舞伎でやる意味じゃないかと思います。でもそれにとらわれすぎると融合できなくなってしまうと思うので、意見を出し合いながら作っていけるのが楽しみです。

松也 歌舞伎自体、テクノロジーがない時代から色々な工夫をして作ってきた演劇ですから、いわば究極のアナログエンターテインメント。再現度を求めるなら2.5次元になる。そうでなく我々がやる意味として、良い意味で観客を裏切って「こうなるのか!」と驚かせたい。歌舞伎という型を通すことで、逆に驚きが生まれる。それが面白さであり、見どころのひとつだと感じます。