『DMM TV』の勝算は…COO・村中悠介氏が語る「総合サービスとして振り切ってやり切れる」

予算ありきでは決めない…オリジナル番組への思い

村中悠介※ザテレビジョン撮影


――オリジナルバラエティでは、佐久間宣行さんと藤井健太郎さんがプロデュースするオリジナルバラエティ番組を第1弾・第2弾としてそれぞれ配信するそうですが、お二人を作り手として起用した意図を聞かせてください。

第一に、最前線で活躍されているトップのクリエイターさんの裁量に任せて、一緒に面白い物が作れたらという思いがありました。当社ではたくさんのオリジナルアニメを製作しているのですが、その中で感じるのは、自分の企画を温めているクリエイターさんは多いということ。そういった方たちは、目の前にある作品を毎クール回していかなければいかないけど、「いつかは世に出したい」という願望を大体抱えているものなんですよ。

そんなクリエイターさんに「実現しましょう」と提案をすると、いつも喜んでいただけるんです。やはりクリエイターさんは、自分のアイデアを世に出すチャンスを欲している。だから今回も、「DMM TVだから…」というよりは、自由に番組を作れる環境があるからお引き受けいただけたのではないかと推察しています。その他にも、相当振り切った作品が出来上がったので、ご期待ください(笑)。

――オリジナル番組をつくるうえで、予算やコンプライアンスの面で意識されたことなどはありますか。

予算ありきでは特に決めていません。クリエイターさんがやりたいことはどれくらいの予算がかかるのか、から考え始めています。また、コンプライアンスに関しては内規はあるのですが、極力、クリエイターがやりたいことを表現できるような環境を整えています。もちろん、その中でも「これどうする?」という問題が発生しますが、そこは都度相談しながら解決方法を見つけてやっていて、ギリギリを攻めています。テレビのギリギリではなく、配信のギリギリなので、よっぽどですよね(笑)。

――村中さんは長年インターネットと映像に関連するサービスに携わられていますが、近年の動画コンテンツの変化をどう見ていますか。

倍速再生などで早く見るという行為も当たり前になっていて、短く楽しむことが主流になっている印象を受けます。今は、娯楽が多様化し、ユーザーの可処分時間の奪い合いが加速していると言われる時代です。そんな中で、インパクトと内容を伴ったコンテンツを供給しなければならず、クリエイターにとっては非常に難しい時代ではないかと。

ただ一方で、一度火が付くと流行るのも早いというか。たとえば、「愛の不時着」などはNetflixがどうこうというより、「愛の不時着」を見たくてNetflixに加入したという人も多くいたはずです。そんなふうに、コンテンツの熱狂が一度生まれたらすごいことになるのも、今の時代の特徴だと思います。

「熱狂的な人たちが集まるような場にしたい」今後の展望


――ここまで村中さんのお話を聞いていると、「DMM TV」ではマーケティング重視というよりは、とにかく作り手主導の面白いものを作りたいという意識が強いような印象を受けました。

それがなかったら、クリエイターさんがうちとやる理由もないんじゃないですかね。たとえば、佐久間さんが手掛けた「DMM TV」の番組の台本を拝見させていただいたのですが、私がバラエティの台本を見るのが初めてということもあって、完成した作品を見るまでは正直どう面白くなるのかわかりませんでした(笑)。ただ、出来上がった映像を見させていただきましたが、とても面白かったです。

――最後に、これから「DMM TV」をご覧になる方へ向けてメッセージをお願いします。

飽きさせない仕掛けにこだわり、企画に関してもかなり頑張って作っていくつもりです。今が100%だとは思いませんが、尻上がりに良くなっていくはずで、ユーザーの皆様に長く遊んでいただけるようサービスを拡充させていきます。

とはいえ、ニコニコ動画がそうですが、“文化”を作るまでには一定期間を要するとも考えています。ニコ動とファンの関係性のような、熱狂的な人たちが集まるような場にしたいと思っていますが、そのためには、コンテンツや料金、使い勝手やサービスの横断性…そのいずれかが欠けてもダメ。だからこそ、全部振り切って投資するということをユーザーの皆さんにお約束します。

文=こじへい