佐藤流司、立ち止まって考えた“悩みの多い”2022年 「人が思いつかないような芝居」武器に広げる可能性

モーツァルトとダ・ポンテは「あぶない刑事」?

──もともとモーツァルトという人物にはどのようなイメージをお持ちでしたか?

ぶっちゃけイメージがないです。音楽室に肖像画が飾ってあるっていうくらいしか。ただ……この時代って証拠が残っていないじゃないですか。唯一残っているのが音楽。だからすげーなとは思いますね。頭の中どうなってるんだろうって。

──では、モーツァルトの音楽に対してはどのような印象がありますか?

めっちゃざっくりしたイメージの話ですけど、ベートーベンは攻撃力高めじゃないですか。で、ショパンはちょっと優しめ。モーツァルトはその間くらいにいると思っていて。俺はどっちかというと、自分がやっている音楽が攻撃力高めなので、そんな俺がやるとどうなるのかなとは思いますね。音楽に対する熱量や想いが、どれだけ自分と同じで、どれだけ違うのかは、台本を読んでみないとわからないですが。

──相方となるロレンツォ・ダ・ポンテ役は橋本良亮(A.B.C-Z)さんです。橋本さんにはどのような印象を持っていますか?

ジャニーズの方って器用になんでもできちゃうイメージがあって。だからどっちがどっちを引っ張っていくとかじゃなくて、ディスカッションをしながらお互いの考えや想いをぶつけ合っていけたらと思っています。

──稽古の段階からディスカッションを重ねて。

そうですね。でも俺はあんまり話し合いが好きじゃなくて。話し合いというよりも、稽古中の板の上で、芝居で話し合いたいという感じです。

──モーツァルトとダ・ポンテとはバディのような関係で物語が進んでいくかと思いますが、どのような二人になっていきたいと考えていますか?

そうですねぇ……「あぶない刑事」みたいな?(笑) ドタバタなコンビだけど、心の奥底では繋がっていて信頼し合っているみたいな。貶し合ったりするけど、信頼している。滲み出るような信頼関係が見せられたらと思っています。

逃げられないこの仕事は、俺の性に合っている


──今作のタイトルは『逃げろ!』ですが、佐藤さんは、何かから逃げたくなる気持ちはわかりますか?

はい。「宝くじの1等を当てて隠居したい」といつも考えています。この仕事をしていると、いつも挫折するんですよ。毎回自分のできなさに嫌気がさして。作品中に毎回必ず一度は逃げたいと思います。

──そういうときはどうやって乗り越えるのでしょうか?

契約だから。単純に、逃げたらえらくお金かかっちゃうじゃないですか(笑)。でもそれがありがたいことでもあって。昔バイトをしていたことがあるんですが、そっこー逃げ出してるんで。だから逃げられないこの仕事は、俺の性に合っているなと思います。

──冒頭で2022年は悩みの多い年だったと話していましたが、ではそんな2022年を経て、2023年はどのような年にしたいと考えていますか?

今まで以上に、一つ一つ大事にやっていこうと思っています。あとはあんまり考え過ぎないようにしようと思って。俺は普段、稽古とか本番の前に準備運動を一切しないんですよ。アップせずに舞台に出て、終わったあとのクールダウンもせず、家に帰って酒飲んで寝るっていうスタイルでいつもやっているんですけど、夏の舞台では初めてアップして、クールダウンして、酒もやめたんです。そしたら怪我したから、意識し過ぎないほうがいいのかなと。だから2023年は、アップせず、ダウンもせずに、酒飲んで寝るっていう、もとの生活に戻そうと思います(笑)。

■取材・文/小林千絵