【テレビの開拓者たち / 井上由美子】「昼顔」「キントリ」脚本家が明かす2つのこだわり

2017/06/11 20:00 配信

ドラマ インタビュー

“今っぽさ”は常に作品の中に出したいと思っています


'14年に手掛けたヒット作「昼顔~平日午後3時の恋人たち~」(フジ系)は、ことし映画化。6月10日より全国公開中


──そして、「白い巨塔」('03年フジ系)という不朽の名作のリメークで、また半年間の長丁場に…。

「大河ドラマを1年書き終わった後だったので、半年ということには抵抗はなかったですね。それよりも、作品自体に対する恐さの方が大きかった。絶対に過去の『白い巨塔』('78~'79年フジ系、脚本=鈴木尚之)と比べられますから。私自身も好きなドラマで思い入れもあったし、山崎豊子さんの原作小説も、初めて自分のおこづかいで買った本だったので、『なぜ私に?』なんて思いましたけど、でもこれは絶対にやりたいなと思いました」

──このころからでしょうか、社会派の脚本家という評価が定着してきたように思いますが、井上さんご自身の意識としては…?

「自分では、社会派を売りにしているつもりはないんです。ただ、常に、今でこその題材…と言いますか、“今っぽさ”は常に作品の中に出したいと思っています。たとえ時代劇でも、今との接点を見られるのがテレビの醍醐味だと思うので」

──今の時代の“アイテム”ではなく、今の時代の“空気感”を描くということですね。「14才の母」('06年日本テレビ系)もセンセーショナルな作品でした。あのタイトルは、志田未来さん演じる「14才の母」のことでもあり、田中美佐子さん演じる「14才(の娘)の母」のことでもあるのかなと思いましたが…。

「そうです、そうです。ダブルミーニングなんですよ。それと、本来は新聞の表記では“歳”にしないといけないらしいんですけど、敢えて“才”にしたんですよね。『才能』の“才”ということで、世の中のお母さんたちに、いろんな才を持って子育てしてほしい、という願いを込めて」

──そういえば、最終回で北村一輝さん演じる週刊誌の編集長が一度「歳」と書いてから「才」に書き直す、というシーンがありましたね。

「私の中では、あのシーンには、まさに今言ったような思いが込められていて。ただ、ドラマの中でわざわざせりふとして表現するのはどうかなと思って、あのぐらいにとどめておきました(笑)」

──社会派の枠にとどまらない愛情あふれる目線ですね。一方で、連続ドラマWの第1作「パンドラ」('08年WOWOW)は、まさに“THE社会派ドラマ”という骨太な作品でした。

「私としては『パンドラ』も、社会派と気負うより、エンターテインメントのつもりで書いたんですけどね。あるパーティーでお会いしたWOWOWのプロデューサーの青木(泰憲)さんから、『ウチでドラマを書くつもりなんてありませんか?』って聞かれて、『WOWOWでオリジナルの連ドラができたら、面白そうですね』なんて盛り上がったんです。そしたら、すごく動きの早い方で、数日後に『やりましょう』とお電話をいただいて」