【テレビの開拓者たち / 西田二郎】未来のテレビに必要なのは“間違える勇気”

2017/06/21 06:00 配信

バラエティー インタビュー

何よりも作り手の“熱”を大切にしているんです


ライブ動画サービス「LINE LIVE」で“テレビを超えた演出”をコンセプトに送る生配信番組「Nj印」


――'98年からは、番組制作会社「ワイズビジョン」の設立メンバーとして、「わらいのじかん」('99~'00年テレビ朝日系)、「松本紳助」('00~'06年日本テレビ系/'03年より「松紳」に改題)など、読売テレビ以外の局の番組も数多く手掛けられています。

「『ダウンタウンDX』を始めるときに、僕は『EXテレビ』の思想を受け継ぎたいと思ったんですね。だけど『DX』以降に新しい番組を始めるときは、『EX』と『DX』、この二つの番組とは違った展開で自分の中にあるものを紡ぎ出したいと。そのためには、絶えず視点や発想を変えて、違う場所を掘っていったほうが可能性があるんじゃないかと思うんです」

――現在、読売テレビの編成企画部長であり、「未来のテレビを考える会」の代表理事でもある西田さんですが、今現在のテレビメディア、そしてそれを取り巻く状況を、どうご覧になっていますか?

「『テレビはもはや娯楽の王様ではない』とか、いろいろと厳しい声もありますけど、個々の番組のクオリティは、昔と比べて間違いなく上がっていると思うんですよね。ただ逆に、うまく作りすぎていて、それまでの常識をぶち破るような魅力に欠けている気がするんです。残念ながら、“熱”が感じられる番組が少ない。そもそも『EXテレビ』の視聴率企画にしたって、深夜番組とはいえ、要は『他局を見てください』って呼び掛けてるわけで、常識に照らして考えれば、完全にご法度ですからね(笑)。もしかすると今のテレビマンは、ある種“間違える勇気”を持つことも必要なんじゃないかな。もっと言うと、世の中にも、もう少し間違いを許す余裕が生まれるといいなと思うんだけど(笑)。

かく言う僕自身、間違いを恐れず、いろいろと試行錯誤しているところで。例えば、今年に入って『愛するバックショット』('17年3月、読売テレビ)という番組の企画・演出を手掛けたんですが、これは海外に番組のフォーマットを販売することを前提にしているんです。テレビの新たなビジネスモデルを構築したいという思いから生まれたプロジェクトです」

――親子や夫婦、友人といった“愛する人”を、後ろ姿を見ただけで当てる、というクイズバラエティーですね。

「普遍的なテーマなので、どの国でも楽しんでいただけるんじゃないかと思うんですよね。ちなみに、番組内で流れる音楽はすべて僕が“Nj”という名義で作曲していて、京都フィルのメンバーが生で演奏してるんですよ。個人的にも新たな挑戦ができましたね」

――他にも、LINE LIVEで『Nj印』と題した生配信のシリーズも手掛けられています。

「第1弾は、『ダウンタウンDX』の放送中に、元チーフプロデューサーの僕がタレントさんたちと一緒に番組の裏話を実況する、という掟破りに挑戦しました(笑)。LINEの配信とはいえ、言ってみれば“裏番組”を作っているわけで、『元スタッフが何してんねん』って話なんですけど、会社(読売テレビ)は『どんどんやれ』と言ってくれて。ホンマにありがたいなと(笑)。

ともあれ、自分が手掛けている企画は、『破綻してる』とか『掟破り』とか、たとえ批判されようとも、われわれ作り手の“熱”を何よりも大切にしているつもりなんです。だから、若いテレビマンのみんなにも、間違いを恐れず“熱”を注ぎ込んだ番組を作っていってほしいですね。むしろ、『どんどん間違えようぜ』と言いたいです(笑)」