2016年度にBS、CS(有料多チャンネル)で放送されたオリジナル番組の中から、優れた番組・企画を表彰する「衛星放送協会オリジナル番組アワード」が今年で第7回を迎える。前回を11作上回る121の応募作品の中から、オリジナル番組賞(全7部門)とオリジナル編成企画賞の最優秀賞および審査委員特別賞が6月12日に発表された。
ドラマ番組部門の最優秀賞には、広末涼子、森山未來らが出演した「ドラマW 稲垣家の喪主」(WOWOWプライム)が輝いた。未婚の叔父と伯母を結婚させようと、子どもたちが奮闘する姿を描いたホームコメディーだ。アワードの審査委員長を務めるノンフィクション作家の吉岡忍氏は、「コミカルでありながら、典型的なハッピーエンドではなく、ストーリーは複雑。何より子役の金成祐里くんの好演が光った」と受賞理由を明かす。
中継番組部門は「ゆる~く深く!プロ野球」(NHK BS1)が選ばれた。「ファウルボールは1試合何球?」などのマニアックなネタを、中継とは別カメラで紹介するなどの挑戦的な企画に対して、「マンネリ化しつつあるプロ野球中継に新しい風を吹き込んだ」(吉岡氏)と評価する。
バラエティ番組部門の「KNOCK OUT(ノックアウト)~競技クイズ日本一決定戦~」(ファミリー劇場)は、まさに地上波では放送できないクイズ番組といえる。一般クイズ愛好家のレベルの高さに焦点を当て、常人では理解できない問題を理解できない速さで答える姿はじつに痛快。博学の吉岡氏でさえ、「全部で200問くらいあったと思うが、私が分かったのは2問だけ」と舌を巻く。
ほかにも、ドキュメンタリー部門で、160兆円規模といわれる中国物流を支えるトラックドライバーに密着した「爆走風塵 ~中国・激変するトラック業界~」(NHK BS1)、情報番組・教養番組部門で、英国の劇場文化と俳優養成システムに焦点を当てた「英国男優のすべて 英国男優はこうして作られる」(AXNミステリー)、アニメ番組部門で、世界最高のアート・アニメーター、ユーリー・ノルシュテイン作品のHD修復版を本人の解説付きで紹介する「甦るノルシュテインの世界 #1『霧の中のハリネズミ編』」(イマジカBS)、ミニ番組・番組PR部門で、映画やドラマなどでみるシーンを実証する「日本映画専門チャンネル×サバイバルファミリー 矢口史靖の『映画の常識、それほんと!?』」(日本映画専門チャンネル)が受賞。BS、CSならではのオリジナリティーあふれる番組がそろった。
オリジナル編成企画賞は、「追悼 演出家・蜷川幸雄」(日本映画専門チャンネル)が最優秀賞を受賞。蜷川舞台の屈指の名作の収録映像が残っているという噂を聞いた編成企画担当者が、たったひとりで素材探しから権利者や出演者への許諾までを取り、放送にこぎつけた。吉岡氏も「言葉は悪いが、組織ではなく“ひとりのアホ”が企画を実現し、チャンネルを変えた」と絶賛していた。
なお、今回選ばれたオリジナル番組賞の最優秀賞作品の中から大賞が決定。7月13日(木)に都内で開かれる授賞式で発表される。
長 昌之
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