コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回紹介するのは、過去に保育士として働いていたときに起きた経験をもとに描かれたエッセイ漫画『新卒保育士VS歪んだ愛の先生』。
作者のさいおなおさんが10月1日からTwitter上で連載を開始すると、度々1万いいねを超える反響が集まり、「そんな先生いるの?」「似たような経験ある…」「読み応えすごい」などとさまざまなコメントが寄せられた。今回は、作者のさいおなおさんに話を伺い、創作の裏側などを語ってもらった。
作者であるさいおさんが保育士1年目のとき、パートナーになったのは2年目の先輩・ユガミ先生。ユガミ先生は、お気に入りの園児・Aちゃんを冗談やノリと言いながら、突き放したり泣かせたりした後に優しくするような歪んだ愛や認知を持つ人だったのだ。ユガミ先生の園児との接し方を疑問視するさいお先生は園長先生に相談し、園長先生も改善を図ろうとテコ入れをするも、何もかもがすり抜けていき状況が変わらないままの日常が続く。
運動会が近づき、準備や練習に追われるなか、切羽詰まったユガミ先生は園児によく怒るようになっていた。ある日、ユガミ先生は余裕のなさから園児を押し入れに閉じ込めてしまう。すぐに園児にかけよったさいお先生はユガミ先生を「それは保育じゃありません」と一蹴したものの、ユガミ先生との溝が深まるばかりだった。
その後、他の先生の助けもあって無事運動会は成功に終わった。クラスもいい方向に向かうと思っていた矢先、ユガミ先生の園児への対応が変わっていないことに気付いてしまう。新卒保育士での力の限界を感じたさいお先生は「保育園を辞めるしかないのか…」とまで悩んでいた。大きなイベントごとをすべて終え、園長先生はユガミ先生とさいお先生を話し合わせる目的で、クラスごとに1年間の反省の場を設け…
新卒保育士のさいお先生と歪んだ愛を持つユガミ先生がパートナーを組んで1年間クラスを持ったときの苦悩や奮闘を描いた本作。近年、増えている保育園での虐待問題との関連性や特徴的なキャラクターの外見なども話題を呼び、Twitter上では「自分の今までの保育や同僚の保育のことを色々考える機会になった」「新人保育士の目線がリアル」「一気に読みました」「最初から最後までハラハラドキドキ」など多くのコメントが寄せられ注目を集めている。
――『新卒保育士VS歪んだ愛の先生』のお話を描こうと思ったきっかけや理由があればお教えください。
元々毎日投稿を2022年の9月半ばから始めていて、じゃあそろそろ連載ものでも練習してみようかな、と10月から始めたのが「新卒保育士VS歪んだ愛の先生」でした。連載を描いてみようと思ってもネタが何も思いつかなかったので、個人的に印象深かった、新卒で保育園に勤め始めて1年目のとき一緒にクラスを持った先生のことを中心に漫画を描いてみることにしました。
当時はそこまで読まれていなかったのですが、とにかく始めて終わるところまでを最優先に考えて続けていました。あまり反応がなかったら、このまま短い話で終わろう、と。万が一読んでもらえたら、その題材をもとにしっかり連載してみよう、と思っていました。
――『新卒保育士VS歪んだ愛の先生』では、歪んだ愛・認知を持つ「ユガミ先生」の行動を変えるために立ち向かっていく様子が描かれていますが、途中で諦めようと思ったり、怖さが勝ったりすることはなかったのでしょうか。
ユガミ先生に対して、怖さというのはあまりありませんでした。気まずくなったら嫌だなとか、クラスの雰囲気が壊れるかなとか、そういうのはすごく思っていた気がします。何があっても毎日必ず一緒にクラス内で過ごさなくちゃならなかったので、「もう諦めるか…」と感じた瞬間があっても、またあとから「やっぱり伝えようかな」と思い直すの繰り返しでした。
――本作を描くうえで特にこだわっている点や、「ここを見て欲しい」というポイントはありますでしょうか。
物語の始めこそ分かりやすく「この人は悪い!」「この人は正義の味方!」と描きましたが、人には良い面も悪い面もあり、両方の狭間で葛藤しながら生きているよね、みたいなのを少しずつ出していったつもりなので、登場するキャラクターたちの内面も見てくれていたら嬉しいなと思います。
あと、むしろ全然こだわらなかった部分なのですが、逆にこだわりっぽくなってしまった「キャラクターの外見と名前」でしょうか…笑。みんなその場の思いつきで決めました。フォロワーさんも面白がってくれているようで、楽しめているなら結果オーライだなと思っています。
――本作以外にもさまざまなエッセイ漫画を描かれていますが、作品のテーマとして採用するときの基準などはあるのでしょうか?
いつもは子どもの「かわいいと感じた瞬間」「笑えると思ったこと」を軸にして描いています。少し長めに描くならギャグだけじゃ難しいので、喜怒哀楽の「怒哀」の部分で印象に残っているものも思い起こして、描けそうなものを選ぶようにしています。
あんまりテーマは決まっていません…。でも自分の思い出しやすいものを選ぶと、描いている間に自然と無意識に抱いていたテーマのようなものも見えてくるので、私には合っているのかなと思います。
――今後の展望や目標をお教えください。
もっとフォロワーさんも増えて、これから描いていく漫画も読んでもらえるようなヒット漫画家になりたいです。保育士としても自分にできることは諦めずに活動して、保護者が見ても、同業の保育士さんが見ても、子どもが見ても何か感じることがあるような人になれていたら良いなと思います。
――最後に作品を読んでくれている読者やフォロワーにメッセージがあればお願いします。
いつも読んでいただいてありがとうございます。毎回感想をいただけるのは、本当に励みになっています。なかなか尖った内容でもあると思うので、これが読まれたときにどう感じられるのか分かりませんでしたが、嬉しい感想や、私も勉強になるようなコメントも頂くことがあって、今は本当に描いて良かったと思っています。細かなところまで見てくださるので、そこを狙って遊び心を潜ませるのも日々の楽しみです。笑 これからも漫画は描いていくので、楽しんでいただけたら本望です。
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