「まわりに合わせてしまいがち」な方にこそ、読んでほしい1冊『レイクサイド』/佐藤日向の#砂糖図書館

2023/01/14 20:00 配信

アニメ 連載

佐藤日向※提供写真

声優としてTVアニメ『ラブライブ!サンシャイン!!』『少女☆歌劇 レヴュースタァライト』などに出演、さらに映像作品や舞台俳優としても幅広く活躍する佐藤日向さん。お芝居や歌の表現とストイックに向き合う彼女を支えているのは、たくさんの本から受け取ってきた言葉の力。「佐藤日向の#砂糖図書館」が、新たな本との出会いをお届けします。
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大学を無事に卒業することができた。
勉強漬けの日々は大変ではあったが、受験から卒業まで自分の意思で勉強を続けることは、知識以外にも得ることがあったと卒業できた今だからこそ感じる。

今回紹介するのは、東野圭吾さんの『レイクサイド』という作品だ。
名門の私立中学校に入るべく受験勉強をしている子どもと、子どもよりも強い意志で"名門"の中学に自分の子どもを入学させることに執着している両親。
そんな4組の家族が湖の近くの別荘で勉強合宿をしている時、主人公の愛人を奥さんが殺害してしまうところから物語は始まる。それぞれの思惑が糸のように絡まり、解けない状態のまま放置されている、そんなもどかしさが詰まった作品だった。

本作を読んだ瞬間、会話や各登場人物が持つ雰囲気から違和感を覚えた。「子どもファースト」のような会話を繰り広げているのに、親としての立場に固執しているが故に、不正をしてまで中学受験で合格させようとしていたり、殺害が警察にバレることによって子どもの受験に響くから、というだけの理由で通報をせず、4組の家族で隠蔽を行うなど、何かに固執することの怖さが描かれている。固執しすぎることも勿論怖さがあるが、集団になったときの「まわりに合わせなければいけない」空気感の怖さというのは、日本人特有のものではないだろうか。

たとえば、中学受験に対して意欲的でないとしても、受験をしないことがマイノリティになってしまうと感じた途端、まわりと合わせるために受験をしなければならないような気がしてくる、というような。

受験に限らず、学校、会社、人が集まるコミュニティでは、誰しもそういった経験をしたことがあるのではないだろうか。本作の怖さは、まわりに合わせ続けることで引き返すことができなくなり、一生罪を背負って生きていくことになったことだと、私は感じた。

犯人が誰なのかを探すミステリーではなく、犯人がわかった状態で、そこからどう物語が動くかを魅せてくれるのは、東野圭吾さんの作品ならではの楽しみ方だと私は思っているので、作中で描かれる子どもと親の受験に対する温度差や、主人公が真実に少しずつ近づく様子は、犯人がわかっているからこその楽しみ方があり、とても面白かった。

自分の意思で勉強をしたい、と思える学生生活を送らせてくれた両親にはとても感謝している。まわりに合わせてしまいがちな人には、是非本作を読んでみてほしい。

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