ソンジェが「ゴールデンスプーン」を除隊後の俳優復帰作として選んだ理由は「演技の幅を広げたかったから」。だが、久々の演技な上に主役ということでプレッシャーもかなりあったようで、撮影期間は台本を常に離さずに持っていたそうだ。また、約半年間の撮影期間中ほぼ休みが無く、ずっとスンチョンとして暮らしていた為に役柄に影響されてだんだん無気力になっていったんだとか。「僕は、もともと余裕がないとダメだし、自分の時間も必要なんです。そうすればするほど明るく幸せになる人なのに、スンチョンは全く逆だから…」と、彼自身とのシンクロ率はほぼ無いと語っていた。
「ユク・ソンジェの強くて欲望にあふれた演技が見られるドラマとして残りそうだ」とスンチョン役を振り返った彼は、“記憶に残るシーン”として、「12話でスンチョンとテヨンが本当の両親を選ぶのか、今のままの入れ替わった人生を生きるのか争った場面」を挙げ、「お互いの傷と感情が画面でよく伝わったようで良かった」と理由を述べていた。
アクションが思った以上に多かったことも大変だったようだ。「僕がキャスティングされた理由が“除隊したばかりで体力がありそう”ってことらしいです。ここまでアクションがあるとは知らずに撮影に入りました。知ってたら、アクションを専門的に学んだのに」とこぼしていた。実際に川に落ちて泳いで潮流から抜け出すシーンを撮ったりもしたし、ケガも多かったそうだ。
このように心身ともに全力でスンチョンを演じたソンジェだが、監督からのダメ出しも誉め言葉もほとんど無いまま撮影は進み、彼は監督がどう思っているのかすごく気になっていた。しかし、終盤にさしかかった頃に「とても上手く演ってるよ。信じて見ていたら、キミがもっと自然に演じられるようになったのがわかったし、本当のキミの演技ができたみたいだね」と言われたんだそう。それを聞いて、自分自身への信頼が増し、自らに対する疑いもなくなったんだとか。だが「それでも実はよく分かりません。僕が見た時、まだ自分の演技が残念な場面も多く、他の先輩たちの演技に感じる深みやカリスマが僕には無いようです」と謙虚な姿勢は崩さない。
しかし「今後多くの作品をやっているうちにノウハウが生まれると思う」と語り、演技を始めた当初は「できるだけ無難にしよう」と演じていたのが、経験を重ねるうちに欲も生まれ、最近ではアドリブを入れたり、相手のアドリブを受けたりするのも面白くなってきた。「これくらいはしてもいいんだ」と思えるようになってきたそうで、実際少しずつノウハウを身につけ始めている。
そんな彼が今、一番演りたいのはヒーロー物。ハリウッドでMARVELヒーローを演じたいそうだ。だが、それには英語力がまだまだ足りず、英語習得の為に時間が許すなら留学したいんだとか。「1年間、ただの留学生のユク・ソンジェとしてだけ生きてみたいです」と想いを語っていた。
デビュー11年目に入り、「無難にやり過ごすんじゃなく、自分の力で乗り越えなければならない状況に直面した時は、ちゃんとやけどしてみたいんです。もっと挑戦して甘みと苦味を味わって、新しくて大胆なことを経験したい」と、現状に甘んじずに次のステージに向かう姿勢を見せているユク・ソンジェ。熱しやすく冷めやすい彼の熱がずっと冷めないのが、歌と演技。
「僕を好きで認めてくれる方々が居るので、その方々を信じてさらに発展する姿をお見せしたい責任感が生まれます」と言う彼は、持ち前のチャレンジ精神で、いつか本当にヒーローとして映画に出演するのではないだろうか。その姿をスクリーンで観る日が今から楽しみだ。
◆文=鳥居美保/構成=ザテレビジョン編集部
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