【漫画】“無意識の偏見”に立ち向かう…主人公の物語に“いいね”11万超の反響「胸に刺さる」「考えさせられる」

2023/02/07 18:00 配信

芸能一般 インタビュー

見た目で“偏見”を受ける主人公の心の葛藤を描く…ひるのつき子さんの『133cmの景色』が話題(C)ひるのつき子/新潮社

コミックの映像化や、ドラマのコミカライズなどが多い今、エンタメ好きとしてチェックしておきたいホットなマンガ情報をお届けする「ザテレビジョン マンガ部」。今回は、病気によって幼いままの見た目で大人になった女性が、葛藤しながらも偏見に立ち向かう姿を描いた『133cmの景色』をピックアップ。

月刊コミックバンチ(新潮社)に読み切り掲載された本作を、作者のひるのつき子さんが2022年12月30日にTwitterに投稿したところ反響が相次ぎ、あわせて11.8万以上の「いいね」が寄せられ話題を集めている。この記事では、ひるのつき子さんにインタビューを行い、創作の裏側やこだわりについてを語ってもらった。

無意識な偏見、言い返せない悔しさ…葛藤しながらも前を向く主人公の物語に共感続出

『133cmの景色』より(C)ひるのつき子/新潮社


身体の成長が止まる病気により、身長133cmの幼い見た目のまま大人へと成長した主人公・吉乃華。小学生の頃はその事実を重く受け止めていなかったものの、成長するにつれて周囲からの偏見や先入観により、いつも“子供扱い”されてしまうことに悩んでいた。

職場の女性社員に心ない言葉をかけられては、その場を取り繕おうと「すみません」と頭を下げ、合コンでいい雰囲気になった男性から興味本位で身体のことについて聞かれれば、笑顔で「ごめーん」とやり過ごす。そんな中、後輩で新入社員の岩見が無愛想ながらも誰に対してもはっきりと物を言う姿を見て、吉乃はその“自分自身に対して真っ直ぐな姿勢”を羨ましく感じる。

ある日、岩見と二人で取引先を訪れた際、病気のことを明かすも担当者から“成人に見えない”という理由で相手にされず、「ご不安な気持ちにさせてしまい申し訳ありません」と頭を下げる吉乃。常に見た目で判断されることに傷つきながらも、つい空気を読んで自ら謝ってしまうことに対して吉乃は、“私はどうしていつも私が私であることを謝っているんだろう”と悔しさをにじませる。しかし、岩見の言葉を思い出し、“今までの自分にもそうさせてきた人たちにも負けてたまるか”という思いで立ち上がり…。

主人公・吉乃の姿を通して、容姿に対する無意識な偏見や先入観を受ける立場の“生きづらさ”や心の葛藤を繊細に描いた本作。キャラクターの美しい表情描写も反響を呼び、Twitter上では11.8万以上の“いいね”とともに「と、尊い…!」「好きが溢れて叫び出したくなる」「感動した」「心に響く素晴らしい漫画」「かっこいい」「凄く引き込まれる」「色々と考えさせられる内容だった」などのコメントが集まった。また、自身も低身長であるという読者からは「私も低身長でコンプレックスだったのでストーリーが胸に刺さった」「自分と重なった」「立ち向かう勇気になりました」「私は私って言えるようになりたい」という共感の声も多く寄せられ、話題を集めている。

「生きづらさや寂しさを抱えた人に寄り添える漫画を」作者・ひるのつき子さんが創作の裏側とこだわりを語る

『133cmの景色』より(C)ひるのつき子/新潮社


――『133cmの景色』を創作したきっかけや理由があれば教えてください。

病気の影響で身体の成長が止まった女性のインタビュー記事を見た担当さんからの提案がきっかけです。もともと人の外見についての話に関心があり、今までそのようなテーマで漫画を描いたこともあるのですが、もっと踏み込んだものを描きたいと思っていたことと、私自身持病があり子どもの頃から病気と付き合って生きていること、担当さんも私も自分の外見で嫌な思いをしているという共通点から、挑戦させていただきました。

――外見で判断されてしまうことに悩む主人公・吉乃と、無愛想ながらも言いたいことははっきりと言う後輩・岩見、それぞれのキャラクターはどのように生み出されたのでしょうか。

二人の性格や体格は正反対であることが望ましいと思い、そこから肉付けしていったら華ちゃんと岩見くんが生まれました。ネーム会議に出したところ「シスターフッドのような関係の方がいいのでは(岩見くんは男性はなく女性の方がいいのでは)」という意見も出たのですが、メインを女性だけに絞ると「それぞれの辛さがある」というところからブレると思い男性のままにさせていただきました。

――『133cmの景色』では、場面ごとにさまざまな顔を見せる吉乃の繊細な表情描写も印象的です。本作を作画する上でこだわった点はありますか?

表情だけで何を感じているのか伝わればいいなと思いながら描いています!今回は社会的な話を描いているので、瞳など普段はキラキラさせているところを意図的におとなしめに作画しました。

――本作の中で、ひるのつき子さんにとって特に思い入れのあるシーンやセリフがあれば、理由と共に教えてください。

作中、主人公が言っている「それぞれ何かを抱えている」が一番のテーマなのかなと思っています。一見幸せそうな人であっても、裏にどんな生きづらさを抱えているかはわからない。他人の生きづらさを尊重できるようになったら、自分にも他人にももっと優しくなれるし外見で判断することも少なくなっていくのではないかと思います。

――ひるのつき子さんは本作以外にも、『制服にさよなら』や『ひとりぼっちのGroupie』など女の子同士の関係性をテーマにした創作漫画を多く描かれていますが、漫画創作全般においてのこだわりや特に意識していることがありましたら教えてください。

私自身漫画に励まされて生きてきたので、何かしら生きづらさや寂しさを抱えた人に寄り添える漫画を描きたいなと思いながらいつもお話を考えています。

――最後に作品を楽しみにしている読者やファンの方へ、メッセージをお願いします。

今回、とても多くの方からあたたかい言葉をいただきとても感謝しています。今後も作品でお返しできるよう頑張ります!