夜道雪が赤裸々に振り返る、東京住宅事情/夜道 雪のBlowin' the Night wind!#6「東京"LDK"物語」

2023/02/04 19:00 配信

アニメ 連載

夜道雪撮影:近藤宏一


東京で5年、ひとり暮らしをしてわかったこと


「すみません。〇〇の物件気になっておりまして。」
「あー…そちらの物件なんですけれども…」
「いわゆる事故物件のため…家賃が半額となります。」

!? マジか。本当に事故物件ってあるんだ。いや、あるのは知ってたけどこんな感じで引き当てるものなんだ?
不動産屋は詳細な情報は伝えられないようなのだが、死因に事件性はないが物件内で人が亡くなってるので、しっかり考えてくださいね。とのこと。
流石の私も少々気が引ける。
ゴキブリ、ピンポンダッシュときて、次は心霊だもの。

勝手に皿を割られたら片付けが大変だ。
夜中に物音で叩き起こされても嫌だし。
排水溝に長い髪の毛が詰まってたら掃除が面倒だ。
勝手に電気をつけられたら電気代の無駄だし。
でもこんなにも良物件が家賃半額で初期費用まで安くなるのは非常に助かる。
丸一日悩んだ。

【おばけなんて ないさ♪
おばけなんて うそさ♪
だだだだだだだってそんな事を言い始めたら普段利用してる病院だって何人もの人が亡くなっているはずだ私が入院中に寝ていたあのベッドの上でもだいずれ人は必ず土に還るのだから亡くなる事は至って自然な事じゃないか当たり前のことじゃないかそれがただこの部屋だっただけで何も怖い事じゃないお化けとか心霊とか言うのってあまりに失礼じゃん私だってパパやママだっていつか死ぬんだ(早口)
おばけなんて ないさ♪
おばけなんて うそさ♪】

よし、この物件にきめた!(震え声)

そして私の事故物件生活が幕を開けた。
引っ越し作業を全て終えた私は一息つき、部屋の真ん中に正座して目を閉じ、手を合わせた。
「貴方様がいたからこの素敵なお家に住まわしてもらえることになりました。ありがとうございます。どうぞ安らかに」と。

そして現在。1年以上この物件に住み続けているが、特に声が聞こえたり皿を割られたりといった、恐れていた怪奇現象にはあっていない。
全面クリーニングされて美しいこの物件に半額で住めてる私はなんて幸運なのだろうか。幽霊だとかそういう類の物が存在するかしないかは私にはよくわからないが、もし存在しているのであれば、前住民の方には感謝を伝えたい。

そして約5年ひとり暮らし生活をしてわかったこと。世の中本当に恐ろしいものは、亡くなった人間より生きてる人間である。それとゴキブリです。
田舎から上京してきたみなさん、
くれぐれも戸締まりと生ゴミにはお気をつけくださいね。

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