オスカー候補「ブラックパンサー」続編の魅力 存在感際立つ“女王”や“2人の天才”に胸躍る大作

2023/02/05 06:10 配信

映画 コラム

映画「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」より(C)2023 MARVEL

シュリにいい刺激を与えたのが、本作で新たに登場したリリ・ウィリアムズ。マサチューセッツ工科大学(MIT)に通う19歳の学生で、シュリに匹敵するほどの天才的頭脳の持ち主。大学の授業で何気なく作った“ヴィブラニウム探知機”がトラブルを生み出したりするが、新しいものを開発する意欲などを含め、気になる存在である。独自に開発した“アイアンハート”スーツも実に興味深い。演じているのはドミニク・ソーン。彼女はニューヨークのプロフェッショナルパフォーミングアーツスクール(PPAS)で演技を学び、舞台で経験を積んできた。ディズニープラスで年内に「アイアンハート」が配信されることが決定しているが、そこでもソーンが同役を務めるので、つながりを楽しむためにも本作での彼女の演技は見ておくべきだろう。

そしてもう一人、ネイモアも本作の重要人物だ。ワカンダとヴィブラニウムを巡って対立する“海の帝国”タロカンの王で、陸の上でも水中でも自由に呼吸ができ、足首のところに生えている羽根で空を飛ぶことも可能。演じているのはメキシコ生まれのテノッチ・ウエルタ・メヒア。2009年公開の「闇の列車、光の旅」でのギャング団のリーダー役で注目され、実話をもとにした「チリ33人 希望の軌跡」などに出演。2022年に日本でも公開されたバイオレンス・ホラー「フォーエバー・パージ」でも高い演技力で爪痕を残している。タロカンの人たちが登場したからこそ海中でのバトルシーンが多く見られ、ネイモアがいたからこそ、空中での戦いにも発展していった。前作は陸上での戦闘が主だったが、今回は陸空海とそのフィールドが拡大しており、作品自体のスケールアップにもつながった。

「第95回アカデミー賞」では、アンジェラ・バセットの助演女優賞をはじめ視覚効果賞、衣装デザイン賞、メイクアップ&ヘアスタイリング賞、歌曲賞(主題歌賞)の計5部門にノミネートされている「ブラックパンサー/ワカンダ・フォーエバー」。“前哨戦”の「第80回ゴールデングローブ賞」ではバセットが助演女優賞を受賞しており、3月のアカデミー賞の受賞発表に期待が高まる。

◆文=田中隆信