有功の気持ちを知った家光は、有功に「大奥総取締」の役目を授ける。有功は大奥の者たちに各々役目をもうけ、それぞれの心の拠り所となった。
その後、家光は政に励むが、無理がたたって帰らぬ人となる。家光は息を引き取る間際に病床で、有功に「わしにとって今も昔も男はそなただけじゃ」と告げた。有功も応えるようにしっかりと手を握り、「私もにございます、上様」と言う。
家光は有功に体を預けたまま「わしたちは心しかなかったから、お互いにとって唯一のかけがえのない者となれた」と言い、もう一度名前を呼んでもらうように願う。有功は家光を女名である「知恵様」と呼び、家光は安心したように目を閉じて力尽きた。有功は涙を流しながらもう一度、知恵様と名前を呼んで家光を抱きしめるのだった。
運命に翻弄された家光と有功の姿に、胸に熱いものがこみ上げてくる。葛藤と業がうずまく重い内容ながら、そのなかでお互いを思い合う純粋な気持ちが浮き彫りとなって感動を呼ぶ「家光×有功編」だった。
◆構成・文=牧島史佳