武藤敬司、“一番のライバル”はグレート・ムタ…自身のプロレス人生で「人材を残せた」「プロレスを守ってきた」

引退の決め手は「やっぱり身体」プロレス人生は“完全燃焼”

武藤敬司※ザテレビジョン撮影


――改めて引退を決めた理由は何だったのでしょうか。

やっぱり身体だよ。特に膝は24歳の時からずっと悪くて、悩んで悩んで、2018年に両膝を人工股関節にした。あと、股関節も痛くて動かなくなっちゃった。気持ちがやりたくたって、身体がついていかない。

――以前よりも思うような動きができないというジレンマも、やはりあったのでしょうか。

そりゃそうだよ。ただプロレスの場合、体操の選手みたいにアクロバティックな動きをするだけで「いい試合」と評価されるわけじゃない。プロレスファンは意外と“わびさび”も見てくれるから、ありがたいですよ。

――ご自身の中では「やりきった」という感覚なのでしょうか。

そうだなぁ、やりきっちゃったよな。常に最高を求めてきたけど、今はもう無理。完全燃焼だな。

――長きに渡るキャリアの中で、「武藤敬司」というプロレスラーは、どんな功績をプロレス界に残せたと思いますか。

人材は残せたかな。今、新日本でトップ張ってる内藤(哲也)や棚橋(弘至)、全日本の諏訪魔とか、多少なりとも影響を与えてるしね。もう一つ、90年代から2000年の初めぐらいまではK-1やPRIDEといった新興勢力に押されてたんだよ。変な話だけど、(アントニオ)猪木さんなんてプロレス側の人間なのに、そっちに染まっちゃった(笑)。俺はその思想が合わなくなって、プロレスを追求したいし、プロレスをやりたいから全日本に行ったという事情もあるんだけどね。そういう点においては、プロレスというものを守ってきたような気がするよ。

引退試合のドーム大会は「時代の先駆けとなるようなイベントに」


――引退試合はABEMA PPVで配信されます。かつてはテレビ中継されていたプロレスが今、ネットで楽しめるようになったことについてどのように思いますか。

ノアはABEMAで中継が観られたり、PPVができたりする。これからのプロレスは民放じゃなくて、こういう仕組みを持った団体が世界で戦う時代なんじゃないかな。それこそ、天心vs武尊戦が行われた「THE MATCH 2022」なんて、PPVで50万件以上の券売があったわけでしょ?民放でやるのと比じゃないくらい莫大な金が集まるよね。今回のドーム大会は、そんな時代の先駆けとなるようなイベントにしていけたらと思っています。

――最後に、引退試合の見どころを教えてください。

もうありのままを見せるだけです。最後だから一生懸命、今の俺で闘うしかない。今回は、新日本や全日本、ドラゲー(DRAGONGATE)の選手も出場してくれるけど、今のご時世、これだけ多くの団体が参加してくれる興行はない。よく集まってくれたと思うし、本当にレスラー冥利に尽きます。きっとプライドをかけた闘いを見せてくれると思います。だからもう、全部が見どころだよ!

文=こじへい

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