ムシクは、刑務所に出入りを繰り返すクスリ漬けでDVの父親と、そんな男と離れられず食堂を細々と営む母親の元で育った。貧しい生活だったが、そのおかげで彼は自身でお金を稼ぐ喜びを知り、金稼ぎに卓越した才能を発揮するようになる。
学生闘争や陸軍の諜報部隊を経て、彼は地方でトップの英語塾を経営していたが、後輩との再会から賭博場をいくつも経営するように。大金を手に入れるが、国税庁の査察が入り、彼は友人を頼ってフィリピンへ逃亡。一度はフィリピンのカジノで持っていた大金をほとんど失うが、現地でカジノを経営するミン会長(キム・ホンパ)と知り合い、持ち前の才覚を発揮して認められ、カジノ王の道を歩み始める。
ムシクの青年期をイ・ギュヒョンが演じているのだが、最新のAI技術とCGで、チェ・ミンシクとイ・ギュヒョンの顔を混ぜて、全くの別人に見えないようにしている。ムシクの30代もこの技法でチェ・ミンシクを若返らせているが、長い尺で使うにはまだまだ向上の余地があり、かなり苦労したとのこと。
同様に声もAIで変えているが、監督は「ミンシクさんの若い頃の声を本当にいろいろな値を組み合わせて見つけました。過度に変えたら偽物みたいになるし、加工しなさすぎても違いがわからなくなるので、その調整がカギでした」と、撮影後のインタビューで苦労を吐露していた。
ムシクは、フィリピンに住む韓国人たちに一目置かれ、権力者や警察にも顔がきく存在になっていく。頼れる存在の反面、ギャンブル中毒になった社長をカモにしたり、大金を横領した者に裏で容赦ない制裁を加えたりする恐ろしい一面も持っている。ムシクが力を持つにつれ、彼を疎ましく思ったり敵対視する者も現れる。
フィリピンの韓国大使館の領事・チョ(イム・ヒョンジュン)はムシクを目の敵にし、フィリピンの警察に初の韓国人デスクとしてやって来たオ・スンフン(ソン・ソック)も、最近起きた2件の韓国人絡みの殺人事件がどちらもムシクの影がチラつくことに着目し、ムシクの動向を追うようになっていく。また、ムシクが弟分に「面倒をみてくれ」と頼まれたソ・テソク(ホ・ソンテ)は、ムシクに対して妬みや嫉妬心がどんどん膨らみ、シーズン1のラストで寝ているムシクに銃口を向ける。
銃声でS1は終わり、2人がどうなったか知りたくてS2を早く観なければ!という気持ちにさせる。また、スンフンは拳銃を非合法に手に入れ、ムシクとの対決を予感させた。
そして、S1の冒頭で描かれたムシクがミン会長殺害容疑で逮捕されてしまった経緯や内幕もS2で明らかになる。この事件が「カジノ」のメインとなる出来事で、状況が大きく変わるポイントだ。
「S1ではカジノの生態が描写されたとすれば、S2ではカジノという空間でムシクに吹き荒れる嵐のようなストーリーが展開されます」と監督が語るように、栄華から一転、全てを失うことになるムシクの一世一代の賭けと、彼を取り巻く人々との攻防がS1での伏線の回収と共にスピーディーに描かれる予定だ。
◆文=鳥居美保/構成=ザテレビジョンドラマ部
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