夜道雪が、「いちばん」になりたい理由/夜道 雪のBlowin' the Night wind!#7「メインストリートをつっ走れ」

2023/02/18 19:00 配信

アニメ 連載

夜道雪撮影:近藤宏一

声優、YouTuber、モデル、コスプレイヤー、そして2022年7月からは自身名義での音楽活動も。「マルチタレント」を掲げ、さまざまなジャンルで活躍する夜道雪(よみちゆき)のコラム連載、「夜道 雪のBlowin' the Night wind!(夜風に吹かれて!)」がスタート! 地元・北海道から上京し、現在の「表現者・夜道雪」が生まれるまでの道のりを、「夜道節」で綴っていきます。


何においても1番になれたことがない私


18歳の時、筑波サーキットの2周目、私は人生で初めて、サーキットで転倒した。

一周目を走り、メインストレートを越えてすぐのカーブだ。
序盤は前を走るライダーのラインを辿りながら、最終コーナーで目の前のライダーを抜き、ホームストレートへ滑り込む。右手を大きく捻るとCBRが唸り、私は独りになった。ぐんぐんせまる第一コーナーが、今までとなんだかと違う。
目標がないとうまく走れない。追いかける相手がいなくなると、ライン取りが難しい。
後ろのライダーの圧迫感を背中に感じながら暫くは走り続けたものの、第一コーナー前で「ダメかも」という恐怖心が出てきた。バイクは心に迷いがでると、走りにも顕著に現れる。
不安は現実となり、そのコーナーで転倒した。

私は何においても1番になれたことがない。

小学校の運動会、徒競走は6人中5位。下から2番目。ビリこそ回避はしたものの、メダルはもらえない努力賞。
午前の部が終わり、お昼ご飯の時間、生徒達がそれぞれ自分の家族のいるシートに行きお弁当をみんなで食べる。
アルミホイルに包まれたおにぎりと大きなお弁当箱に詰まった沢山のおかずを食べながら、
「雨が降ればよかったのに」なんて言って不貞腐れた。「朝早く起きてお弁当作ってくれたのに努力賞で情けないな」なんて、本音を口に出してしまえば、家族の前でおにぎりに涙をこぼしてしまいそうだったからだ。

そんな時、ふと一緒に徒競走を走った最下位の子を思い出した。ビリのあの子は先生や生徒、保護者達から「がんばれー!」と応援されながらヨタヨタとゴールしていた。
「ほおっといてあげたら良かったに」と、他人事のように頭の中で呟いたこの瞬間、ふと胸がざわついた。
もしあの子がいなかったら私がビリになっていた。そうしたら私があの歓声を受けながらゴールする事になっていたかもしれない。
ビリになるのは怖い。負けた事のある人間にしか、あの恐怖はきっとわからない。頑張れ頑張れと応援してる連中は、きっとビリになったことがないのだろう。負けた事のない人間は無自覚に傷つけてくる。本人達にそのつもりがなくても、私なら晒し者にされているような気持ちになっているだろう。あの子は充分、頑張っていたはずだ。
この時、1位にならなくてもいい、でも最下位にだけはなっちゃいけないと感じてしまった。


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