2023年3月6日、ReoNaは自身初の日本武道館ワンマンライブのステージに立った。直前には、自身初のアーティストブック「Pilgrim」を刊行。そして届けられた2ndフルアルバム『HUMAN』は、絶望系アニソンシンガー・ReoNaがデビューから歩んできた5年弱の道のり、アニメやゲームの物語と向き合ってきた経験、自らのお歌を受け取る聴き手や、ともに音楽を作るクリエイターたちとの出会い――それらすべてと、さまざまな局面で生まれた感情を投影した1枚となった。「絶望」と向き合い、寄り添い続けた果てに、「人間」に寄り添うことができたアルバム『HUMAN』はなぜ素晴らしいのか、3日連続公開のロング・インタビューで明らかにしていきたい。第3回は、『HUMAN』を携えたReoNaはどこへ向かうのか、というテーマで話を聞いた。
――『HUMAN』は絶望系アニソンシンガーとしての5年間の歩みが詰まっている作品でありつつ、アルバム制作を含む直近1年は特に濃密な時間だったんじゃないかと思いますし、受け取ったものも大きかったのかなと。この1年で得たものが『HUMAN』に投影されているとすれば、それは何だと思いますか。
ReoNa:観念的なところで話していいのであれば、出会いと別れがなかったら、きっとこうは成り得ていないアルバムだと思います。
――出会いがたくさんあったのはわかるとして、別れというのは?
ReoNa:物理的な別れも、経験したくない別れも経験してきました。ReoNaとして走り出した当初は、何も取りこぼしたくないというか、誰ひとりとも別れずに、このままみんなと一緒に走っていきたいって思っていたし、それは今もすごく思ってます。でもやっぱり時を経て、人として生きていく中で、どうしても迎えたくない別れはあって。
だからこそ……というと、きれいな言葉になっちゃうんですけど、やっぱり出会いと別れって表裏一体なものだなって思います。今出会えている誰かと過ごせてる時間が当たり前じゃない中で、それでも生きていくにあたって“Alive”や“HUMAN”には、わたしがきっと欲しかった言葉が含まれていて。それは、わたし自身が噛み締めたい言葉でもあり、そういう意味でも、出会いと別れがあったからこそ紡げてる楽曲たちです。
――『unknown』が出るときに、全12曲を総括する言葉として「普遍を撃ち抜く」という表現を使わせてもらいました。それは、「普遍」というものの一端をえぐるようなイメージだったんだけど、『HUMAN』はそのど真ん中をいくアルバムだと思うんです。『unknown』は自分自身と向き合った上で生まれたアルバムだったけど、『HUMAN』は何と向き合った結果こういう1枚になったと思いますか。
ReoNa:『unknown』はたぶん、自分の内なるものと向き合って、だからこそ誰かが自分の内なるものと共鳴させてくれてできたものだと思っています。だとすると、『HUMAN』は……矢印の向きが変わったのかな……? でも、全曲を通して、確実に変化はしてると思うんです。
――『unknown』は内面や過去の体験から生まれた感情にフォーカスしていて、それもパーソナルに「わたし、つらかったんです」っていうものではなく、誰もが経験したかもしれない感情が描けていたと思うんですね。
ReoNa:そうですね。人とつながってるからこそ存在し得る自分、みたいなところが、すごくあると思います。
――『HUMAN』は、究極にシンプルに言うと「人間」と向き合った結果、でしょうね。人間と向き合って、世界と向き合った。
ReoNa:はい、人間です。
――『unknown』のときに、「音楽に振り向いてもらえた」っていう印象的な話をしていて、でも当時は100パーセントではなく、少し振り向いてもらえた認識だったじゃないですか。今も、100パーセント向いてもらえてるかというと、もちろん全然余地はあると思うんだけど、そのとき以上に振り向いてもらえた感覚はあるんじゃないですか。
ReoNa:あります。振り向いてもらえたのも、『unknown』のときは音楽側の動きだったのが、今回は自分から一歩近づいてみたような感じです。
――振り向いてもらえたと同時に、自分から寄っていった。
ReoNa:はい、寄っていきました。理解したいと思うことも増えたし、理解したからこそ、自分がまだできてないことにも気づくことができました。
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